研究課題/領域番号 |
18K11077
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 和人 九州大学, 大学病院, 助教 (50711214)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究助成の一部により我々は、ミトコンドリアに局在したんぱく質の翻訳や代謝を制御する分子の一つであるp32に着目し、樹状細胞の代謝・活性化におけるミトコンドリアを介する経路の一つを明らかにした。その代謝経路の中で特にピルビン酸デヒドロゲナーゼという酵素がミトコンドリア内でのクエン酸合成や樹状細胞の活性化に重要な因子であることを明らかにした。ピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤であるCPI-613という低分子化合物は、樹状細胞の活性化を阻害した。さらに、この阻害剤はマウスの卵白アルブミンを用いた卵アレルギーの病態モデルにおいて、p32部分欠損マウスと同様に卵白アルブミンに対する抗体産生量を減少させた。これらの結果により、p32やピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害は、卵アレルギーを含むアレルギー性疾患の創薬開発につながることが期待される。本研究は、2018年11月13日(米国東部時間)に科学誌「Cell Reports」のオンライン版で公開し、九州大学よりプレスリリースを行った。内容はオンライン誌に取り上げられ、注目を集めた。 さらに、本研究助成により、 我々は独自にミトコンドリアの代謝を制御するp32という遺伝子を同定して、ノックアウトマウスを樹立した。これまで我々が報告した通り全身性・脳特異的p32欠損マウスは胎生致死である。また、心臓・肝臓・マクロファージ特異的p32欠損マウスは肥満に影響がなく、血球系特異的p32欠損マウスのみが体重減少することを見出したため、このマウスを用いて詳細な解析を行った。我々は、ミトコンドリア依存的な新たな血球分化についての論文を投稿中である。後日、成果報告を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究助成も含めた研究成果として、2018年11月13日(米国東部時間)に科学誌「Cell Reports」のオンライン版で公開し、九州大学よりプレスリリースを行った。内容はオンライン誌に取り上げられ、注目を集めた。今後も、さらに研究が進展し、現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア機能と肥満の関係のマウスの個体を用いた解析 (i) TFAM過剰発現マウスと肥満の関係:我々は独自に全身性TFAM過剰発現マウスを樹立した。さらに現在、Cre-loxpシステムを用いた臓器特異的TFAM過剰発現マウスの樹立に着手している。全身性・脳・心臓・肝臓・筋肉・血球特異的TFAM過剰発現マウスを樹立して、TFAMの過剰発現がどの臓器特異的に肥満に関与しているかを明確にする。(ii) 臓器特異的TFAM欠損マウスと肥満の関係:これまでの報告において全身性・心臓・血球特異的TFAM欠損マウスは胎生致死であることが報告されているため、肝臓・マクロファージ特異的TFAM欠損マウスを樹立して、TFAMの遺伝子欠損が肥満に関与しているかを明確にする。(iii) 臓器特異的p32欠損マウスと肥満の関係:我々は独自にミトコンドリアの代謝を制御するp32という遺伝子を同定して、ノックアウトマウスを樹立した。これまで我々が報告した通り全身性・脳特異的p32欠損マウスは胎生致死である。また、心臓・肝臓・マクロファージ特異的p32欠損マウスは肥満に影響がなく、血球系特異的p32欠損マウスのみが体重減少することを見出したため、このマウスを用いて詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度には、予定通り研究を行った。残金は、来年度に使用予定である。
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