本研究助成の一部により我々は、ミトコンドリアに局在したんぱく質の翻訳や代謝を制御する分子の一つであるp32に着目し、樹状細胞の代謝・活性化におけるミトコンドリアを介する経路の一つを明らかにした。その代謝経路の中で特にピルビン酸デヒドロゲナーゼという酵素がミトコンドリア内でのクエン酸合成や樹状細胞の活性化に重要な因子であることを明らかにした。ピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤であるCPI-613という低分子化合物は、樹状細胞の活性化を阻害した。さらに、この阻害剤はマウスの卵白アルブミンを用いた卵アレルギーの病態モデルにおいて、p32部分欠損マウスと同様に卵白アルブミンに対する抗体産生量を減少させた。これらの結果により、p32やピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害は、卵アレルギーを含むアレルギー性疾患の創薬開発につながることが期待される。本研究は、2018年11月13日(米国東部時間)に科学誌「Cell Reports」のオンライン版で公開し、九州大学よりプレスリリースを行った。内容はオンライン誌に取り上げられ、注目を集めた。 我々は独自にミトコンドリアの代謝を制御するp32という遺伝子を同定して、ノックアウトマウスを樹立した。これまで我々が報告した通り全身性p32欠損マウスは胎生致死である。また、心臓・肝臓・マクロファージ特異的p32欠損マウスは肥満に影響がなく、血球系特異的p32欠損マウスのみが体重減少することを見出したため、このマウスを用いて詳細な解析を行った。
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