研究課題/領域番号 |
18K11079
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
岡本 士毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命講師 (40342919)
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研究分担者 |
益崎 裕章 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CRH / 食嗜好性 / 肥満 / 減量 |
研究実績の概要 |
肥満は様々な疾患に繋がるリスクファクターである。肥満症を軽減するために減量処置は有効であるが、無理な減量後にリバウンドを起こしやすい事や、減量後に偏食・摂食行動異常を伴う事が多い事も知られている。しかし詳細な脳内分子メカニズムは不明である。これまでに研究代表者は高脂肪食嗜好性を示すC57BL/6マウス視床下部室傍核(PVH)に存在するコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)産生ニューロンが炭水化物嗜好性制御ニューロンとして機能することを報告した(Cell Reports, 22, 706-721, 2018)。飢餓時にAMPキナーゼが鋭敏に活性化するCRHニューロンが活性化することで炭水化物嗜好性を促進し、エネルギー枯渇状態からの速やかな回復に寄与すると考えられた。その後、高脂肪食摂餌により肥満させたC57BL/6肥満マウスでは飢餓時であるにも関わらず高脂肪嗜好性が亢進し、その後に減量処置を施しても嗜好性は回復するものの総カロリー摂取量が上昇したまま推移し、容易にリバウンドし得る摂食行動に変化することを見出している。 肥満から減量後の食嗜好性制御CRHニューロンの動向と神経新生に注目し、肥満後の摂食行動異常における脳内メカニズムの解明を目指し、肥満マウスと肥満減量マウスPVHにおけるcDNAアレイを実施した。すると注目しているCRH以外にも減量特異的発現変動を示す候補遺伝子群を見い出した。新たに候補に挙げられた因子を減量後摂食障害関連因子として着目し、発現変動の検証と制御機構について詳細に検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル動物の準備である導入後の繁殖と系統維持に手間取り、解析可能なマウス母集団を確保できていない。速やかに当該実験マウスの繁殖を加速し、当該実験マウスの作出を遂行するとともに遅延を取り戻す。一方、CRH以外の摂食障害関連遺伝子発現探索計画を遂行するため、視床下部室傍核(PVH)におけるcDNA array解析を実施し、いくつかの候補因子を新たに見出した。 標準体重維持期におけるPVHで発現する遺伝子群に比べて、高度肥満形成期、減量後体重維持期では、摂食行動制御を担う様々な遺伝子群が大きく変動していた。肥満減量後のPVHでは、肥満前に比べて、数種類のイオンチャネルとニューロペプチド受容体の発現頻度が大きく変化したまま維持されていた。さらにATP産生および脱リン酸化に寄与する遺伝子群が抑制されたまま保持されており、PVHにおいて食餌嗜好性制御を担うAMPK活性化の鋭敏な制御機構が破綻している可能性が考えられた。AMPK活性化は食嗜好性制御のみならず、視床下部全体では総カロリー摂取制御にも関与していると考えられるので、肥満減量後のリバウンドしやすさをもたらす責任候補因子を捉えている可能性が高い。現在新たに摂食障害関連因子として候補に挙げられた因子に着目し、発現変動の検証と制御機構について詳細に検討している。
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今後の研究の推進方策 |
CRHニューロン特異的hM4Di発現マウスを用いたリバウンドモデルマウス作成を継続し速やかな解析作業に移行する。また当該年度に肥満減量時の視床下部PVHで見出した減量特異的遺伝子変動をmRNAおよび タンパク質レベルで確認し、機能制御実験を進める。いくつかの変動因子特異的Creマウスは購入可能であり、CRHニューロンと並行してPVHにおいて減量特異的に変動する摂食障害関連因子の機能検証を進める。
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