研究課題
肥満は様々な疾患に繋がるリスクファクターである。急激な減量はリバウンドを起こしやすく減量後に偏食・摂食行動異常を伴う事が多い事は知られているが、その詳細な脳内分子メカニズムは不明である。研究代表者は高脂肪食嗜好性を示すC57BL/6マウス視床下部室傍核(PVH)に存在するコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)産生ニューロンが炭水化物嗜好性制御ニューロンとして機能することを報告した。飢餓時に一部のCRHニューロンが活性化することで炭水化物嗜好性を促進し、エネルギー枯渇状態からの速やかな回復に寄与すると考えられた。高脂肪食摂餌により肥満させたC57BL/6肥満マウスでは、飢餓時においても炭水化物嗜好性制御ニューロンの活性化が減弱しており、高脂肪食嗜好性がさらに亢進していた。肥満マウスに減量処置を施しても嗜好性は完全に回復せず、総カロリー摂取量が上昇したまま推移することを見出している。この減量マウスに再度高脂肪食を与えると、初めて高脂肪食を与えた時に比べて1.5倍以上高脂肪食摂取量が上昇し、急峻にリバウンドした。肥満減量後に見られた食行動の乱れの原因を解明するために、肥満減量後にリバウンドしたマウスPVHにおけるcDNAアレイ解析を行い、複数個のリバウンド関連候補遺伝子を新たに同定した。肥満・減量によりCRHよりも発現が大きく変動した因子の中でも、減量後も発現が回復しない肥満記憶候補遺伝子群に着目し、発現改変後の摂食行動解析と検証を進めている。
2: おおむね順調に進展している
肥満・減量後の食行動の乱れの原因を解明するために、PVHにおけるcDNAアレイを用いた発現変動パターン解析により、CRH以外に複数個のリバウンド関連候補因子を新たに見出した。現在肥満マウスで発現が減少し、減量後も遺伝子発現が回復しない肥満記憶候補遺伝子に注目し、in vitro機能解析実験およびPVHでの発現回復後の摂食行動変容を解析している。
CRHニューロン特異的hM4Di発現マウスを用いたリバウンドモデルマウス作成を継続し、摂食行動変容と体重変動を詳細に解析する。また同時に、ウィルスベクターを用いて、PVHでの候補遺伝子の発現を回復させた肥満マウスの摂食行動変容と体重変動を詳細に解析し、候補遺伝子の高脂肪食の過食とリバウンド時における寄与とリバウンド治療への応用を検証する。
当該研究の根幹であるマウス作成に手間取り実験開始が遅れたので、一部使用用途を変更し、先行中の肥満記憶遺伝子の網羅解析を進めたため、余剰の消耗品購入予定費用を次年度に繰り越した。CRHマウスの解析と網羅解析から得られた候補因子の発現改変マウスの解析に充てる予定である。
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