アラキドン酸代謝酵素やその代謝生成物は、アレルギー疾患、動脈硬化、癌など、様々な疾患の発症や病態形成に関与することが明らかになっており、このようなアラキドン酸代謝経路を標的とする薬物や食品成分は、様々な疾患の治療と予防に役立つ可能性がある。食品素材の中には、調理加工を必要とするものもあり、これらは調理加工によって含有成分が大きく変化すると考えられるが、それらの情報については少ないのが現状である。本研究では、調理加工によって変化する食品成分のアラキドン酸代謝酵素に対する影響を検討することを目的とした。 まず、炎症性脂質メディエーターの生成に関わる5-リポキシゲナーゼへの影響を検討した。検討した食品の多くは、非加熱のものと比べて、加熱処理したものの方が5-リポキシゲナーゼ活性を比較的強く阻害する傾向が認められた。これらの食品の中から最も阻害効果の高かったものを選択し、加熱条件を変えて本酵素の酵素活性に対する影響を検討したところ、加熱温度が高くするほど阻害効果が高まる傾向が認められた。また、5-リポキシゲナーゼ以外のアラキドン酸代謝酵素の酵素活性への影響を検討したが、検討した食品では、5-リポキシゲナーゼの活性に対してのみ加熱処理による阻害効果の増強が認められた。そこで、その阻害成分を明らかにするために、阻害成分の抽出方法や各種クロマトグラフィーを用いた分画について検討を行った結果、阻害成分は比較的極性の低い化合物である可能性が示唆されたが、構造を明らかにすることはできなかった。
|