研究課題/領域番号 |
18K11085
|
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
平本 恵一 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (90251793)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 光老化 / 光生物学 / 紫外線 / 記憶・学習能力 |
研究実績の概要 |
先ず我々は光老化の最も重篤な症状である皮膚癌について検討した。光老化によって誘導される非メラノーマ性の皮膚癌が、UVA長期眼照射においても誘導されることが判明した。このことよりUVA長期眼照射は光老化全般について関係していることが示された。更にこの皮膚癌の誘導には副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が重要な役割を持つことが分かった。 UVA長期眼照射後の皮内検討の結果、光老化におけるシワ、色素沈着および皮膚癌の発現にはACTH以外にCRHR type2、μ-opioid receptor、OGFR、urocortin2、β-endorphin、methionine enkephalin、histamineが作用することも分かってきた。これらのホルモンおよび受容体はUVAの直接な皮膚照射によって皮膚で増加してくる。しかし眼照射では皮膚に直接的な刺激が与えられないため、脳(視床下部下垂体系)を介して増加したものと考えられた。 一方、UVA長期眼照射により記憶・学習能力が低下し、脳中のCRHR type2、OGFR、urocortin2、methionine enkephalinのレベルが増加することが示された。このことから皮膚の光老化と記憶・学習能力の低下には脳内の同じ分子が作用していることが判明した。 更に長期眼照射した脳内ではhistamineや炎症性サイトカイン、更には好中球も増加し炎症状態を示した。この炎症状態は長期間続き脳内で慢性炎症状態となる。この慢性炎症が皮膚や脳の老化を誘導している可能性を見出した。しかしながら脳内慢性炎症のメカニズムはまだ分かっていない。 以上のことから、UVA長期眼照射により脳内のホルモンバランスが変化し光老化を誘導していることが分かった。更に脳内慢性炎症が光老化を誘発、もしくは悪化させる可能性が示され、今後検討を加えていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である皮膚の光老化(シワ、色素沈着、皮膚癌)と脳の光老化(記憶・学習能力の低下)の脳内の原因共通遺伝子の探索が順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
脳内の光老化に対する共通遺伝子が見つかってきた。また、慢性炎症に関する項目についても脳内で多く共通遺伝子が見られた。慢性炎症は加齢、アルツハイマーなどの原因となっており脳内慢性炎症を解析することは大変意義のあることと考えられ、光老化と慢性炎症についてさらなる検討を加えて行く予定である。 次年度からは脳内のホルモン系および炎症を動かすシグナル系を検討する。これまでに見出した共通遺伝子がそれぞれどのようなクロストークを行なっているのかを検討するとともに、① 癌においては細胞分裂に関与するもの ② 記憶・学習能力においては免疫系とアミロイド系 ③ 皮膚の光老化においては免疫系、について共通遺伝子がどのように関わっているかを検討する。 また、光の刺激は脳において時計遺伝子と密接に関係している。時計遺伝子はアレルギーや炎症、更にはストレスなどの引き鉄にもなっている。それゆえ、最終的には、時計遺伝子による光老化誘導の包括的なネットワークを検討する。
|