研究実績の概要 |
長期UVA眼照射により皮膚と脳の老化が誘導されることを示した。眼より侵入したUVAは視床下部や皮膚より分泌されるCRHR type2, OGFR, Urocortin2 及びMethionine enkephalinのレベルを調節し、β-endorphin, ACTH 及びHistamineの分泌を介し老化を誘導していた。 また、老化には慢性炎症が関係している。UVA眼照射は脳のmicroglia (M1 macrophage)を活性化し炎症性サイトカインを分泌させ脳を慢性炎症状態にする。さらにこの炎症性サイトカインはβ-amyloidやAGEsの蓄積を増加させ脳の老化を助長する。UVA眼照射では皮膚においてもM1 macrophageが増加し慢性炎症状態となる。 さらに、光刺激は時計遺伝子と密接に関係している。時計遺伝子はアレルギー、炎症、代謝疾患及びストレスに関与している。UVA眼照射によってp53の発現の増加が起こる。p53は時計遺伝子のPER2及びBMAL1/CLOCKを抑制する。時計遺伝子はNAMPTを活性化させNAD経路より長寿遺伝子であるSirt1の合成を誘導する。UVA眼照射は時計遺伝子を抑えることからNAD経路を抑制しSirt1の合成を減少させ脳の老化を引き起こすと考えられた。またSirt1は皮膚を含めた体全体の老化を導くことも示されている。 以上のことより、UVA眼照射はホルモン系、炎症系及び時計遺伝子系を変動させることにより体全体の老化を導くことが示された。本研究によりUVA眼照射による生体への影響について脳-皮膚の遺伝子クロストークが解明され、光老化という現象の一端を解明したと考えられた。さらに時計遺伝子の解析より、光環境及び人の生活習慣などが老化や疾患に多大な影響を与えると考えられ、社会生活と光についてさらなる研究を行う必要性を感じた。
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