研究課題/領域番号 |
18K11086
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
松本 珠希 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (90248047)
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研究分担者 |
林 達也 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (00314211)
江川 美保 京都大学, 医学研究科, 助教 (50600061)
木村 哲也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60533528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 月経前症候群 / 自律神経活動 / 心拍変動 / セルフモニタリング / 行動変容 / 健康習慣形成 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
月経前症候群(PMS)の疫学調査では、月経前の症状を思い出して質問紙に回答するという回顧的調査(Retrospective survey)が主に用いられる。しかし、そこには種々のバイアスが関与することは否めない。回顧的調査と黄体後期に測定した前向き調査(Prospective survey)では、PMS症状の種類や重症度は異なるのだろうか。 今年度の研究では、PMS 回顧的調査(Biopsychosocial Medicine 13:26, 2019参照)に参加した正常月経周期(25~38日)を有する55名を対象に、前向き調査を実施した。被験者には、卵胞期(Day 5-11)と黄体後期(月経前7日間)に各1日実験室に来室してもらった。実験当日、起床時の基礎体温の測定、早朝第一尿の採取をお願いした。また、実験室では、Menstrual Distress Questionnaire(MDQ)に回答してもらい、月経前に経験する46症状について、6段階で評価してもらった。 回顧的調査で発症頻度が高かったPMS症状は、前向き調査においても認めれ、回顧的調査でも、月経前に経験する症状の種類は、概ね正確に思い出すことができると評価できた。しかし、回顧的調査のMDQ総計が黄体後期の前向き調査でのMDQ総計より有意に高く、約20%過大評価する可能性があることが示唆された。 また、卵胞期と黄体後期に実施した前向きMDQ調査結果から、30名がPremenstrual Molimina(軽症月経前症状)群、17名がPMS群に分類された。Premenstrual Molimina群では主に身体的症状が黄体後期で顕著に増加するが、PMS群では身体症状のみならず、より重症度の高い多数の心理・行動・社会的症状も顕著に現れ、月経前症状が多岐に亘ること、これらの症状群が、女性の月経前の心身不調と、延いてはQOLの低下につながることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
回顧的調査、前向き調査における、月経周期性、月経前の不快症状の種類と程度、生活習慣、ストレス状態との関連について、データの収集と解析を行った。現在、自律神経活動動態とPMSを形成する個々の症状との関連の検討、PMSを緩和する健康習慣形成プログラムの構築に取り組んでいるが、予想以上の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
PMSを緩和する健康習慣形成プログラムの実施については、紙ベースの調査用紙とスマートフォンアプリを用いた前向き調査を行う予定だが、その実現に向けては、組織的な取り組みが必要となるため、共同研究者間の連絡体制を整えるとともに、必要であれば、マンパワーも確保する。また、パイロット実験で得られた結果については、常に共同研究者間で討議し、現行のプロトコールを見直しながら、被験者のリクルートシステムを構築し、早期のデータ収集を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際婦人科内分泌学会にて研究発表を行い、PMSと行動変容関連の最新情報を収集する予定にしていたが、新型コロナウィルス感染症流行拡大の影響で、本学会が延期となったため、確保していた海外出張旅費を次年度に繰り越すこととなった。 令和2年度は、令和1年度繰り越し分と合わせた直接経費を、出張旅費、国際学術誌への投稿料、被験者と研究補助者への謝礼金、外部委託の内分泌機能検査費、必要な物品購入のために使用する。
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