膵β細胞における低酸素や糖毒性によるインスリン分泌低下を改善させる食品成分の探索を目的に、ビタミンE(α-tocopherol、γ-tocotrienol)やポリフェノール(Curcumin、Tetrahydrocurcumin、Naringenin、Quercetin)添加によるインスリン分泌の改善作用について膵β細胞株INS-1Eを用いて検討した。 INS-1E細胞を低酸素(5%、24h)または96時間高濃度グルコース(33.3 mM)環境下で培養し、低酸素状態と糖毒性を誘導した。評価対象の物質(α-tocopherol、γ-tocotrienol、Curcumin、Tetrahydrocurcumin、Naringenin、Quercetin)は、低酸素曝露中または糖毒性環境で72時間培養後に24時間添加(最終濃度:20 μM)した。その後、グルコース応答性インスリン分泌をELISA法にて測定した。また、insulinおよびその転写因子(PDX-1)、グルコース代謝関連因子(GLUT1、GLUT2)のmRNA発現量をリアルタイムPCR法により測定した。 低酸素または長時間高濃度グルコース環境下への曝露により、グルコース応答性のインスリン分泌量は有意に低下した。γ-tocotrienol、Quercetinの添加により、低酸素によるインスリン分泌量の低下は有意に回復した。また、PDX-1、insulin、GLUT2のmRNA発現量の有意な低下が見られた。γ-tocotrienol、Quercetinの添加により、インスリン分泌量、PDX-1、insulin、GLUT2発現量は有意な回復または回復傾向が認められた。以上の結果からγ-tocotrienolおよびQuercetinは、低酸素による膵β細胞の機能障害に対して、改善作用を有することが示唆された。
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