研究課題/領域番号 |
18K11094
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山縣 憲司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00420084)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312852)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / 歯周病菌 / 遺伝子改変マウス / ゲノム解析 / 肝癌 / LPS |
研究実績の概要 |
NASHと歯周病菌感染の病因関連性は以前より議論されてきた.歯周病菌でも毒性を発揮するPorphyromonas gingivalis(P.g)菌はNASH患者の唾液では52%に検出される(BMC Gastroenterol 2012).P.g菌はNASH患者の約40%の肝臓に感染している.P.g菌やそのLPSは歯性感染後に血液を介して肝臓や内臓脂肪へ至る.代表者らはNASHを有する中年肥満男性を対象に唾液を収集し,口腔内細菌叢のメタゲノム機能予測解析,唾液成分の測定を行った.その結果,口腔内細菌の菌層構造の多様性の低下,唾液LPS濃度,TNF-alpha濃度,ラクトフェリン濃度の増加が観察され,口腔内環境の劣悪化が推測された(口腔科学会2020).本学で開発されたSqstm1およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスはヒトNASHに類似した表現型をもつ有用なモデルである(Exp Anim 2018). 細胞実験の結果より,Nrf2機能の脆弱化によりLPS に対するKupffer細胞の異物貪食能は低下するが,Kupffer細胞はLPSによる炎症反応が亢進し肝病態を増悪させることも解明されている.本マウスに高カロリー食を24週間摂餌させると,NASH肝病変が進展し,全例に強い肝線維化と50%の頻度で肝癌が認められた. この背景には高カロリー食による口腔内細菌叢と腸内細菌叢の変容が加速し,脂肪組織の増大に伴いLPSによる炎症シグナルが増幅された可能性がある.現在,本マウスより唾液を採取して,口腔内細菌叢に関するメタゲノム機能予測解析を進捗させている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASHを有し歯周病と診断された中年肥満男性では,口腔内細菌の菌層構造の多様性の低下,それに関連して唾液LPS濃度,TNF-alpha濃度,ラクトフェリン濃度の増加が認められ,口腔内細菌叢の異常と口腔内環境の劣悪化が推測された.ヒトNASHモデルであるDKOマウスにおいても高カロリー食の摂餌にて肝病変の増悪と肝発癌が増加した結果を得ており,このことより口腔内細菌叢の変容は病態生理学的に興味深い.
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今後の研究の推進方策 |
DKOマウスを用いて,歯周病菌感染がNASHと肝癌の発症を促進させるかどうかを検証し,その結果より,口腔内細菌の異常が「口腔-腸管-肝」軸を介してNASHと肝発癌により深く関与する新しい概念を構築する. また,DKOマウスをベースに,Nrf2遺伝子の腸管上皮,Kupffer細胞の細胞特異的遺伝子レスキュ-マウスを作製する.歯周病菌感染のもと各レスキューマウスにおけるNASHと肝発癌の頻度を観察し,「口腔-腸管-肝」軸の各部位臓器における転写因子Nrf2の生体防御機構としての役割を検証していく.
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