研究課題
NASHと歯周病菌感染の病因関連性は以前より議論されてきた.歯周病菌でも毒性を発揮するPorphyromonas gingivalis(P.g)菌はNASH患者の唾液では52%に検出される(BMC Gastroenterol 2012).P.g菌はNASH患者の約40%の肝臓に感染している.P.g菌やそのLPSは歯性感染後に血液を介して肝臓や内臓脂肪へ至る.代表者らはNASHを有する中年肥満男性を対象に唾液を収集し,口腔内細菌叢のメタゲノム機能予測解析,唾液成分の測定を行った.その結果,口腔内細菌の菌層構造の多様性の低下,唾液LPS濃度,TNF-alpha濃度,ラクトフェリン濃度の増加が観察され,口腔内環境の劣悪化が推測された(Int J Environ Res & Public Health 2021).本学で開発されたSqstm1およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスはヒトNASHに類似した表現型をもつ有用なモデルである(Exp Anim 2018). 本マウスに高カロリー食を24週間摂餌させると,NASH肝病変が進展し,全例に強い肝線維化と50%の頻度で肝癌が認められた. この背景には高カロリー食による口腔内細菌叢と腸内細菌叢の変容が加速し,細菌由来LPSによる炎症シグナルが増幅された可能性がある.腸内細菌叢の変化では,ゲノム解析の結果より,高脂肪食摂餌は通常食と比較して腸内細菌の種多様性(alpha-diversity)を低下させた. すなわち,DKOマウスは高脂肪食摂餌により腸内細菌叢の多様性が低下し,腸内環境の劣悪化は,肝へのLPS流入の増加に繋がり,線維化進展と肝発癌を促進したと考えられた.現在,本マウスより唾液を採取して,口腔内細菌叢に関するメタゲノム機能予測解析を進捗させている.
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