栄養管理は医療の根幹をなすもののひとつであり、栄養状態は予後に大きな影響を及ぼす。しかしながら、栄養管理のもととなる栄養スクリーニングや栄養アセスメントといったことに関してさえ、有用性に関するデータ、エビデンスが大幅に不足している。そこで、本研究は栄養評価に関するエビデンスを創出することを目的としている。さらに、本研究成果をもって、病院、診療所、在宅を問わず広く適切な栄養評価が実施されることにより、今後、いっそう進んでいく高齢化社会にも対応した医療のさらなる質の向上へとつなげていくことを念頭においている。 本研究は、大学病院内の栄養サポートチーム(Nutrition Support Team: NST)が介入する患者を対象として、栄養評価指標の妥当性・有用性、栄養状態と有害事象、予後との関連を検討した。対象期間中にNSTが介入した患者は1806名であり、本研究の結果、NST対象患者において低ナトリウム血症および貧血が予後予測因子として有用である可能性を示唆する所見が得られた。すなわち、NST介入時に低ナトリウム血症があった場合、3年生存率は約45%であり、低ナトリウム血症がなかった場合と比較して2.29倍の死亡リスクがあることがわかった。また、貧血があると、3年生存率は有意に低下し、貧血がない場合と比較して、1.54倍の死亡リスクがあることがわかった。加えて、貧血の中では大球性貧血の予後が正球性貧血、低球性貧血に比較して悪いという知見も得られた。大球性貧血がある場合、他の貧血と比較して、1.34倍の死亡リスクがあった。
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