研究実績の概要 |
高齢者の健康寿命を延伸させ、老健施設入所、病院への入院を先送りにし、在宅期間を延長させることは、超高齢社会を迎えた我が国の喫緊の課題である。そのためには在宅高齢者の栄養状態を良好に保つことが基盤となる。しかし、集団で給食による栄養管理が可能な施設入所者に比し、個別に独自の食事を摂取している在宅被介護高齢者の食生活の実態は“ブラックボックス”であり、自宅におけるどのような食生活が低栄養状態に関連しているかは、未解明である。個別の自宅における食事内容の把握には、高度に訓練された管理栄養士による解析が必要であり、多数例への適応は困難である。そこで我々が着目したのが、食生活の解析ツールとしての食品多様性調査票(Kimura M, et al. BMC Geriatr. 2013)である。本方法は、10種類の食品群(肉類、魚類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜類、果物類、海藻類、いも類、油脂類)の1週間における摂取頻度を調査するという、極めて簡便な食物頻度調査であるが、食事中の栄養素のバランスを反映し、対象者の栄養状態とも良好に関連することが知られている。我々のパイロット研究から、在宅高齢者における栄養状態と食品多様性とは関連し、栄養状態の悪化に伴い、摂取食品群の多様性が低下していた。本研究において、栄養評価上“低栄養のリスクあり”と判定された中等度に栄養状態が低下した高齢者を対象に、摂取食品群の多様性を向上させることを通じて、栄養状態の改善が得られるか、を検証する。初年度である2018年において、A市社会福祉事業団訪問看護ステーションの担当する在宅非介護高齢者を対象に、食品多様性調査と栄養状態の評価を実施した。2年目に当たる2019年度は、初年次取集したデータの妥当性を検証し、最終年次である本年度は、収集したデータから在宅被介護高齢者の食事状況を把握するに相応しい食事摂取の多様性評価法を検討した。
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