研究課題/領域番号 |
18K11106
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
芝田 京子 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (00307117)
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研究分担者 |
佐藤 公信 国立研究開発法人情報通信研究機構, ナショナルサイバートレーニングセンターサイバートレーニング研究室, 主任研究員 (90461384)
武政 龍一 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (20294837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歩行 / ウェアラブル / 慣性センサ / 腰椎椎間板負荷 / 床反力 / 下肢関節モーメント |
研究実績の概要 |
歩行運動において、全身体の各部位ごとの働きや体にかかる負担など歩行能力の詳しい情報を日常的にセルフチェックできれば、効果的な歩行運動へ反映でき健康維持向上に有用である。従来のセンサシステムは高精度であるが構造が複雑でユーザへの負担が大きい。そこで、本研究では、歩行の特徴を用いて動力学やバイオメカニクスの理論、統計処理を駆使した高度な信号処理アルゴリズムを確立し、さらにクラウド上にデータを集約することで、少数センサで歩きやすさを確保しながら従来法と同等の高精度な歩行情報を長期に亘り連続取得可能で、かつ、理想的なフォームをユーザ自身が体で憶え運動効果が観察可能なトータルシステムを開発する。 初年度は、慣性センサを用いたウェアラブルシステム開発を行い、まず、これまでに確立した静止姿勢において腰椎にかかる負荷を体表面形状から推定する方法が、歩行中において適用可能であるか検討した。結果、対象としている矢状面の負荷推定に関しては、歩行時のねじれ動作や側屈の影響は小さく、また、筋骨格シミュレーションによるモーメントから負荷を推定した従来研究と同様の傾向が得られ、提案の推定法が歩行中にも適用できることを実験的に確認した。この過程で、計測データを基にした脊柱の構造解析により、体表面腰椎形状に影響を及ぼす上半身の自重は姿勢を崩し、骨盤の回転は彎曲を保つ役割を果たすことを定量的に示した。また、片脚支持期において床反力と慣性力がつりあうことに着目し、慣性センサで測定した身体各部の加速度から2方向床反力を間接的に推定、さらにこれを用いて股関節モーメントを推定するアルゴリズムを確立した。床反力計を用いる従来法と比して精度よく、さらに簡易なシステム構成であることを特徴とする。現在は身体各部の加速度を詳察し連動関係を明らかにすることで、計測部位の削減案を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発システムが提供する歩行情報として圧力中心軌跡、筋活動量、両脚支持期の床反力を予定していたが、個人差が大きく再現性が極度に低いため、ウェアラブルセンサで測定可能な情報との関連を明らかにすることが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
床反力や下肢関節モーメントの推定では、歩行の周期性を鑑み周波数解析などを取り入れてさらなる簡易化を図る。また、アルゴリズムの確立に至らなかった歩行情報の推定においては、目的には逆行するが計測点を極端に増やし各点間の相関を詳しく調べることで、計測点を徐々に減らしていくことを検討する。 当初計画になかった腰椎椎間板負荷の推定に用いている体表面腰椎形状を形成する因子とその影響度が定量的に見出せたことは、腰痛の原因となる椎間板負荷の推定精度を大きく向上させることにつながると考え、引き続き脊柱の詳細モデルによる構造解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
センサシステム開発の遅れにより物品費の支出が少なかった。 成果は出ているので、外部発表に充当する予定である。
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