研究課題/領域番号 |
18K11109
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田村 悦臣 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (50201629)
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研究分担者 |
多胡 めぐみ 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30445192)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 抗炎症 / コーヒー / カテコール / 認知症 / BACE1 / NFκB / Nrf2 |
研究実績の概要 |
コーヒーの習慣的喫飲が様々な生活習慣病を予防する効果があることが疫学研究等で示されているが、その分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究課題において、昨年度は、コーヒーの抗炎症効果に関し、LPSで惹起したマクロファージ様細胞RAW254.7細胞において、コーヒー豆の焙煎成分であるカテコール類がLPSによるNFκBの核内移行を阻害することで抗炎症効果を示す事を明らかにした。本年度は、この抗炎症効果のメカニズムをさらに詳細に解析した。その結果、コーヒー成分がLPSによるIKKの活性化を抑制することで、IκBαのユビキチンによる分解を抑制することが明らかとなった。一方、コーヒーは、LPSによるMAPキナーゼの活性化には影響を与えなかった。また、コーヒーは抑制タンパクKeap1の分解促進によりNFκBの負の制御因子である転写因子Nrf2を活性化する。siRNAによるNrf2のknock-downにより、コーヒによるIKKの活性化およびNFkBの核移行の抑制が解除されたことから、Nrf2の活性化がコーヒーの抗炎症作用に必須であることが明らかとなった。 一方、我々は、コーヒーの認知症予防効果についても研究を行った。これまでの研究から、コーヒーの焙煎成分がヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞においてアミロイドβ(Aβ)の生成を抑制することを明らかにし、その効果が、Aβの生成に関わるβ-secretase(BACE1)の分解促進によることを明らかにしている。本年度は、この効果について動物レベルでの研究を行った。4週令のC57BL/6Jマウスに60%(v/v)コーヒーを7週間自由飲水させ、海馬におけるBACE1タンパク質の発現を調べた。その結果、コーヒーを摂取したマウスではBACE1量が有意に低下していた。このことは、培養細胞と同様の反応が個体レベルでも起きていることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コーヒーの喫飲による生活習慣病予防のメカニズムの1つとして想定されている抗炎症作用に関し、炎症性のシグナル伝達系における阻害様式を詳細に解明できたが、敗血症モデルでの検証については、抗炎症効果は見られたものの、シグナル伝達系に対する効果の詳細については不明であり、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
コーヒーの抗炎症作用については、コーヒーで処理したRAW254.7細胞におけるIKK活性化の抑制効果のメカニズムを詳細に解析する。また、コーヒーを摂取させたLPS誘導敗血症モデル動物において培養細胞と同様の効果が得られるかどうかを検討する。さらに、コーヒーを摂取させたマウス海馬におけるアルツハイマー関連脳機能の変化を学習能を指標に評価する。
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