研究課題/領域番号 |
18K11114
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
梅村 義久 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (00193946)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オステオカルシン / メカニカルストレス / 運動 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発令などの影響を受けて、本補助事業による研究は令和2年4月1日より令和3年3月31日まで1年間中断した。 具体的な影響としては、動物実験を行うに際し研究協力者の協力が得られなかったこと、実験実施者が実験室で作業することに感染のリスクを感じたこと、これらの要因から実験動物委員会へ申請する動物実験計画書の提出期日にまでに実験実施の目途が立たなかったことなどであった。 今後の研究の展開としては、前年度(令和元年度)の研究実施報告書の「今後の研究の方針」に示した研究計画に沿って研究を展開して、令和3年度をもって本補助事業による研究を完結させる予定である。 本研究の目的は、ラットを用いて骨に荷重を及ぼす運動をさせる条件および骨への荷重を減少させる条件において、骨から分泌される多臓器連関制御物質の血液中の濃度変化を明らかとすることである。平成30年度の実験においては、運動トレーニングおよび尾部懸垂により脱荷重させることにより、骨細胞から分泌され糖・脂質代謝に影響を与えるGlu-OC(osteocalcin)、およびリン・カルシウム代謝に影響を与えるFGF23(fibroblast growth factor 23)の血中濃度について検討を行なった。しかしながら、これらの指標に明らかな変化を認めなかった。令和元年度は一過性の運動に的を絞り、運動前後の多臓器連関制御物質の血液中の濃度変化について検討を行った結果、いくつかの種類の運動は運動直後にGlu-OCを上昇させることが明らかとなった。この結果を受けて、令和3年度の研究では、運動が含んでいるいくつかの生理学的要因のうち、Glu-OCを上昇させることに関連している因子について検討を加える計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の研究目的は骨へのメカニカルストレスの荷重の負荷または軽減によって骨細胞に刺激が加わった場合、骨細胞から分泌される多臓器関連制御物質の血清濃度がどのように変化するかを検討することである。 令和元年度までの研究において、一定期間の自由走運動による荷重の増加、および尾部懸垂による荷重の軽減は、Glu-OCおよびFGF23の血清濃度に顕著な影響を与えないことが明らかとなった。一方、一過性の運動では、運動の種類によって運動直後に血清のGlu-OCが上昇することが明らかとなった。 このように本研究の目的に沿って一定の結果を残している。しかしながら、コロナ感染症の影響で一年間の研究中断を余儀なくされたため、当初の研究計画よりも遅れているといると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究では、ラットにおいて約5分の100回のジャンプ運動は、40分のランニング運動と同様に、運動直後の血清のGlu-OCの濃度を上昇させることが明らかとなった。一方、約1分の20回のジャンプ運動は血清のGlu-OCに影響を及ぼさないことも明らかとなった。この結果から一過性の運動後に血清OCが上昇する原因の機序に、骨のメカニカルセンサーが寄与している可能性を示した。しかしながら、運動にはいくつかの生理的要素が含まれており、メカニカルストレス以外の要因が働いた可能性も否定できない。筋の収縮によって何らかのサイトカインが放出され、骨が細胞に働いている可能性もある。また、運動によるアシドーシスが刺激となっている可能性もある。 そこで、令和3年度における研究においては、運動にふくまれる要素の一部に相当する刺激を特異的に与えることとする。すなわち、麻酔下のラットに電気刺激により筋を収縮させる、または麻酔下のラットの下腿骨に外的要因により力学的負荷を与える、という介入を行う。介入前後の血液を採取して、OCのなかでも特にホルモンの作用を持つと言われているGlu-OCの変化について測定を行う。この結果により、どのような刺激が骨芽細胞のOC分泌の調整因子になっているのかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度までの研究においては、総じて計画通りに実験が進み、助成された予算をほぼ当初の計画通りに使用した。しかしながら、新型コロナ感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発令などの影響を受けて、本補助事業による研究を1年間中断しため、令和2年度執行予定であった補助金すべてについて令和3年度に使用する計画である。
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