本研究の目的は、ラットを用いて骨に荷重を及ぼす運動をさせる条件および骨への荷重を減少させる条件において、骨から分泌される多臓器連関制御物質の血液中の濃度変化を明らかとすることである。前年度までの研究において、一過性の100回のジャンプ運動や40分の持久的なランニング運動やスイミング運動によって、運動直後に血清カルボキシオステオカルシン(Gla-OC)および非カルボキシオステオカルシン(Glu-OC)が上昇することが明らかとなっている。 令和3年度は一過性の運動が血清Glu-OCを上昇させる要因について検討を加えるために、以下の介入を行い、その前後のGlu-OC濃度の変化について測定を行った。介入は①筋収縮とそれに伴う大きなメカニカルストレスが骨に加わるジャンプ運動100回、②大きな筋収縮が伴わないが大きなメカニカルストレスが加わるフリーフォール100回、③大きなメカニカルストレスが加わらない電気刺激(EMS)による筋収縮(足底屈)100回、とした。また、Glu-OC の上昇により筋からの分泌が亢進されると報告されているIL-6の血中濃度についても測定を行った。その結果、大きな筋収縮と大きなメカニカルストレスが加わるジャンプだけでなく、大きな筋収縮がないフリーフォールおよび大きなメカニカルストレスが加わらないEMSにおいても同程度に介入後にGlu-OCが上昇する結果となった。このため、骨に加わるメカニカルストレス、または筋収縮のみがGlu-OCをが上昇させる要因ではないことが明らかとなった。また、本実験の介入による血清Glu-OCの上昇は、多臓器連関制御物質であるIL-6の濃度に有意な差をもたらさなかった。少なくとも運動直後においては、血清Glu-OCは筋のIL-6放出の調節因子とはならないことを示した。
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