研究課題/領域番号 |
18K11115
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
上硲 俊法 近畿大学, 大学病院, 教授 (20233934)
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研究分担者 |
田中 裕滋 近畿大学, 大学病院, 講師 (00465650)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TICE / 魚油 / ezetimibe |
研究実績の概要 |
小腸はコレステロール(CH)を吸収するのみならず血中から直接小腸管腔にコレステロールを排泄している経路(TICE) の存在が明らかとなった。前年度の研究においてω3脂肪酸含有の多い魚油をマウスに摂取させると小腸のステロールの排泄に関与するABCG5/G8の発現が増加し、便中のステロール排泄が増加している事を確認した。このことは魚油による血中CH低下作用にTICEが関与している可能性を示唆する。ただし便中ステロールはTICEとCH吸収のバランスにより制御されているため、2019年度にはCHの吸収コンポーネントをブロックするezetimibeを併用する事により糞便中ステロール排泄に如何なる影響を及ぼすかを解明する事を課題と以下の実験を行う事にした。(方法)6週令雄性SDラットを標準飼料(AIN-93)に準拠して作成した大豆油投与群(C群)、魚油投与群(F群)、ezetimibe(E)を添加群(E群)と魚油+E投与群(FE群)を作成した。各々の飼料で4週(10週令)飼育した後に実験に供した。肝臓の各種脂質、糞便コレステロールを測定し、肝臓および小腸の脂質代謝関連mRNAの発現を定量した。(結果)①肝臓の中性脂肪(TG)とCH含量は、F群、E群では有意な変化はみなかったが、FE群ではTG, TCとも著減していた。TICEを反映する糞便中CHは、F群、E群では各々1.42倍、1.28倍であったがFE群ではC群と差を認めなかった。小腸の脂質代謝関連mRNAの発現はF群、E群ともCH排泄に関わるAbcG5やAbcG8の発現の増加をみた。過去の報告においてTICEに関連がある可能性が示唆されていたLDL-RやSR-B1の発現量に差は見られなかった。(結論)FE群においては肝臓の脂質が著減していたがTICEの影響は乏しいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ω3脂肪酸を多く含む魚油はTICEを増加させることが明らかになることに加え、CHの吸収を抑制するezetimibeを魚油と併用することにより肝臓脂質は著明に減少をみた。小腸におけるCHの吸収排泄バランスは脂肪肝の治療ターゲットの意義が大きい可能性があることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度、2019年度の研究成果からω3脂肪酸を多く含む魚油はTICEを増加させることが明らかになった。またCHの吸収を抑制するezetimibeを魚油と併用することにより肝臓脂質は著明に減少をみた。これらのことから小腸におけるCHの吸収排泄バランスは脂肪肝の治療ターゲットの意義が大きい可能性があることが明らかとなった。過去の報告でスタチンはTICEに影響を及ぼすことが報告されているが、他の高脂血症治療薬の効果を検討した報告は少ない。従来からfibrate系の薬物はβ酸化を誘導するため脂肪肝に対する効果が期待されていたが齧歯類においてもヒトによる検討においても著明な効果はなかった。そこで2020年度には血中TGを減少させ、強力なPPARαのリガンドであるpemafibrateの併用効果を検討し、「吸収排泄バランスは他の脂質代謝改善薬の肝臓への効果を変化させ脂肪肝の治療ターゲットとなるのではないか」という仮説を検証するため以下の実験を行う事にする。6週令雄性SDラットを標準飼料(AIN-93)に準拠して作成した大豆油投与群(C群)、と魚油投与群(F群)、pemafibrateを添加した食餌投与する群(P群)と魚油+pemafibrate投与群(FP群)を作成する。各々の飼料で4週(10週令)飼育した後に実験に供する。血液、肝と大腸中の糞便を採取する。体重、肝臓重量、下記の血清中生化学分析、肝臓組織像、肝臓の各種脂質、胆汁中脂質、糞便コレステロールを測定する。さらに肝臓および小腸の脂質代謝関連mRNAの発現を定量する。
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