小腸はコレステロールを吸収するのみならず血中から直接小腸管腔にコレステロールを排泄している経路(TICE) の存在が明らかとなった。ω3脂肪酸含有の多い魚油は血清中性脂肪、コレステロールの低下作用や肝臓の脂質代謝においてβ酸化を促進する作用がみられる。そこで本研究では魚油は小腸上皮細胞に作用しTICEに影響を及ぼしているのではないかと考え以下の研究を行った。1)ω3脂肪酸含有の多い魚油をラットに摂取させると小腸のステロールの排泄に関与するABCG5/G8の発現が増加し、便中のステロール排泄が増加していた事から魚油による血中CH低下作用にTICEが関与している事が明らかとなった。2)便中ステロールはTICEとCH吸収のバランスにより制御されているため、次にCHの吸収コンポーネントをブロックするezetimibeを併用する事により糞便中ステロール排泄に如何なる影響を及ぼすかを検討した。雄性SDラットを大豆油投与群(C群)、魚油投与群(F群)、ezetimibe(E)を添加群(E群)と魚油+E投与群(FE群)にて飼育した。小腸AbcG5やAbcG8の発現はF群、E群で増加したが、FE群では相加的な発現増加をみた。便中ステロールはF群、E群で増加したが、FE群では増加をみなかった。一方、肝臓においてはFE群で肝臓中コレステロールと中性脂肪の著明な低下を見た。このことは魚油とEは便中ステロール排泄に関与するが、魚油とE併用による脂肪肝改善に対してはTICEの影響は乏しいと考えられた。3)PPARαはAbcG5/G8の発現に関与することが知られている。PPARαのTICEに及ぼす影響を調べるためpemafibrate(P)の効果を検討した。P投与にて小腸AbcG5やAbcG8の発現増加と便中ステロール排泄増加を認め、PPARα刺激がTICEを亢進する事が明らかになった。
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