ダイゼインによるインフルエンザウイルス増殖抑制機構を明らかにすることを目的とした。また、ダイゼインが大豆の主要なウイルス増殖抑制物質であることはPlant Foods Hum.Nutr. (2019) 74:538-543に報告した。ダイゼイン添加により、細胞内の過酸化脂質(5-HETE) のみの増加が認められた。5-HETE産生に関与する酵素の5-LOXの活性の阻害剤や、siRNAによる5-LOXのノックダウンによっても5-HETEの産生抑制とウイルス増殖抑制活性の抑制効果が認められた。5-LOXのウエスタンブロッティングはダイゼイン添加により活性型の酵素が増加することを示唆した。5-LOXの酵素反応産物である5-HpETEの添加により濃度依存的にインフルエンザウイルスの増殖を抑制した。ダイゼインのウイルス抑制機構におけるシグナル伝達の細部は未だ不明ではあるが、5-LOXの活性化を伴う過酸化脂質を介したシグナル伝達系を用いて、ウイルス増殖抑制を行なっていることが明らかとなった。これらの成果をJ.Clin.Biochem.Nutr.(2020) 66:36-42に報告した。さらに、ダイゼインは感染細胞中で、ウイルスのmRNAの合成を阻害し、その結果、ウイルスタンパク質の合成も抑制することを明らかにした。しかし、その詳細に関しては不明なので、ウイルスRNA合成酵素による非RIのmRNA合成阻害活性測定法の確立を行い、その成果は投稿中である。ダイゼインによるウイルスRNA合成酵素の直接の阻害を調べたが、阻害は認められなかった。やはりこの場合も、ダイゼインのウイルス抑制機構におけるシグナル伝達の関与が示唆された。エストロゲンレセプターやエストロゲンの関与を検討したが、MDCK細胞においてはいずれもネガティブだった。エストロゲン関連レセプターの関与を検討中である。
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