研究課題/領域番号 |
18K11120
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
野村 さやか 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 助教 (20791651)
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研究分担者 |
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 准教授 (10505267)
石塚 俊晶 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 教授 (30399117)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸管幹細胞 / TNF / LPS / LXRアゴニスト / 腸管分化 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
従来の疫学的研究および動物モデルを用いた検討により、高脂肪食の摂取および精神的ストレスは、腸管再生機能を障害することにより炎症性腸疾患の増悪に関連している可能性が示唆されている。最近、我々は、ヒトiPS細胞由来腸管幹細胞へのTNF(高脂肪食摂取により脂肪細胞から過剰分泌される炎症性サイトカイン)刺激が炎症応答に重要な細胞内蛋白質複合体であるインフラマソームの活性化を促し、腸管上皮細胞への分化を低下させることを見出した。一方、核内受容体Liver X receptor (LXR)のアゴニスト投与がDSS誘発性腸炎マウスの腸管障害を改善させることが報告されている。そこで、今回、我々は、ヒトiPS細胞由来腸管幹細胞へのTNFおよびLPS(精神的ストレスによる腸内細菌叢の乱れにより増加が報告されている)刺激時にLXRアゴニストを前添加し、インフラマソーム活性化および腸管上皮細胞への分化に与える影響を検討した。TNFおよびLPSの刺激はヒト腸管幹細胞でのインフラマソーム活性化の指標であるcleaved caspase-1, IL-1beta, IL-18の発現を増加させた。一方、LXRアゴニストであるGW3965, AA70の前添加はTNFおよびLPSの刺激によるインフラマソーム活性化促進に有意な影響を与えなかった。また、TNFおよびLPSの刺激は腸管上皮細胞への特異的分化マーカーであるCDX2の発現を低下させたが、GW3965, AA70の前添加はこの発現低下を阻害した。さらに、GW3965, AA70のみの刺激でもCDX2発現を増加させた。以上の結果より、LXRアゴニストはヒト腸管幹細胞のインフラマソームに影響せずに腸管上皮細胞への分化を促進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、上記の検討に加えて、C57BL/6マウスより単離した小腸組織を横断切離しディッシュ上で培養し腸管オルガノイドを作製した後、TNFおよびLPSの刺激やLXRアゴニストの前添加が、オルガノイドの形態変化、腸管クリプトの組織変化、腸管新生や腸管幹細胞数に与える影響を検討する予定であった。しかし、動物実験計画の学内倫理委員会での承認が遅れたため、現在、実験準備の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度中に動物実験倫理委員会で承認された後、C57BL/6マウスより腸管オルガノイドの作製を実施した。R1年度は産休および育休で1年間の研究中断を申請したが、再開後、オルガノイドを安定的に作製できることを確認した後、刺激実験による影響を早急に検討していく予定である。また、2年目に実施する予定の「DSS誘発性腸炎の腸管組織再生に与える高脂肪食摂取および制限の影響」に関しても、H30年度中にDSS誘発性腸炎モデル作製の準備を行った。こちらも再開後に安定的な作製を確認した後、マウスへの高脂肪食飼育を始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)H30年度は、学内の動物実験倫理委員会の承認が遅れたため、C57BL/6マウスからの腸管オルガノイド作製が十分に行えず、それらの培養や蛍光抗体染色、免疫組織染色に必要な試薬や消耗品類が未使用であった。 (使用計画)産休および育休のため、R1年度は1年間研究を中断する。再開後、試薬・消耗品の調達と実験準備が終わり次第、オルガノイドの培養と刺激実験を行う予定である。また、H30年度中にDSS誘発性腸炎モデルの作製準備を行っており、再開後に、次年度予定である「DSS誘発性腸炎の腸管組織再生に与える高脂肪食摂取および制限の影響」に関する検討を計画通りに実施する予定である。このため、H30年度の残額と次年度の交付予定額を使用する予定である。
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