研究課題
一般に上下肢欠損や切断、脊髄損傷等の肢体不自由者は健常者よりも基礎代謝量(Basal Metabolic Rate、BMR)や総エネルギー消費量(Total Energy Expenditure、TEE)が低いとされているが、そのエビデンスは非常に少ないのが現状である。そのため、活動的である肢体不自由のアスリートのエネルギー消費量の推定はさらに難しい。そこで本研究では肢体不自由のあるアスリートの①二重標識水(Doubly Labeled Water、DLW)法によるTEE、②BMR(安静時代謝量測定値との検証も含む)、③二重エネルギーX線吸収測定(Dual energy X-ray Absorptiometry、DXA)法を基準とした体組成の推定値の比較、④TEEとBMRから算出した身体活動レベル(Physical Activity Level、PAL)のデータをそれぞれ取得し、⑤TEE、BMR、体組成より算出した各指標を多角的に分析することを目的としている。平成31年度は、前年度に実施したデータを基に、脊髄損傷のあるアスリートのエネルギー消費量に影響する要因、非アスリートとの違いについて確認、検証を行い、今後の調査の方向性について確認した。脊髄損傷者において、各種推定式によるBMR推定値との体組成や損傷高位、麻痺の完全性等の関連を検証するも、要因が複数考えられるため、まだ明確な方向性は示せていない。ただしアスリートと非アスリートで体重および除脂肪量当たりのBMRを比較したところ、筋肉量の少ない非アスリートの方が高くなり、この要因として除脂肪量に占める内臓の影響が考えられた。またアスリートの測定結果では、相対的エネルギー不足である可能性が考えられる者もいたことから、慎重に検討したい。
3: やや遅れている
今年度は、国際パラリンピック委員会が開催するVISTA会議の開催年であったこともあり、そこで口頭発表1演題を行い、併せて海外の研究者と情報交換や意見収集を行った。測定では、脊髄損傷のあるアスリート1名の追加測定をできたのみであり、現在分析を進行中である。
2020年東京パラリンピック競技大会の延期が決定し、現在測定実施も様子をみながら計画している。既に連携させていただいている競技団体スタッフとも相談しながら対象者に協力を呼びかけ、測定を実施していきたい。
当初、今年度中に測定を全て終了させる予定であったが、アスリートの競技スケジュールと、施設および測定者のスケジュールの調整が難しかったことが要因となり十分な数の測定を行うことができなかった。今後、さまざまな研究者と意見交換を行い、一部プロトコルの検証も行いながら追加測定を実施する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Journal of High Performance Sport
巻: 5 ページ: 35-43