研究課題
日本を始めとする先進国で少子高齢化が進行し、高齢出産が増加している。高齢者は卵巣に卵子があるにも関わらず不妊になっており、老化による排卵障害の解明が不妊症対策になることは間違いない。研究代表者らは、老齢マウスの卵巣での全遺伝子発現を性周期毎に解析した結果、排卵ホルモン応答初期に活性化される酸化還元酵素経路が大幅に低下していることが明らかになった。そこで、このデータを基に老化マウスの卵巣細胞プロファイリング分析を行い、排卵障害を引き起こす遺伝子・細胞を解明する。さらに、簡便にKOマウス作製が可能な画期的な技術であるGONAD法でのゲノム編集技術を用いて、酸化還元酵素を始めとする排卵障害の候補遺伝子群を欠失したマウスを作製し、出産数や卵巣組織を観察することで老化による排卵障害のメカニズムを解析した。若齢と老齢のマウスを排卵刺激後の卵巣の全遺伝子発現の時間経過を解析し、老化による変動遺伝子約2万種類のビッグデータを主成分解析した。その結果、老齢マウスの卵巣では、排卵誘発ホルモンの応答初期で顕著な遺伝子群の発現変動が観察された。ホルモン応答初期に変動した遺伝子群をパスウエイ解析した結果、性染色体由来のオーファン受容体で活性化される酸化還元酵素が大幅に低下していることが明らかになった。また、第2位で低下が確認された経路として、PI3キナーゼによる細胞骨格タンパク質を介する排卵経路が検出され、臨床データと一致していた。KOマウス作製期間を大幅に短縮できるGONAD法を組合せることで動物個体レベルでの卵巣老化の分子メカニズムの解明が可能になった。その結果、卵巣老化を誘導するゲノム編集マウスが誕生した。このマウスを用いて全遺伝子発現を解析の行った結果、卵巣老化に関与するシグナル経路としてPI3K/Akt経路が原始卵胞で急激に抑制されていることが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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