研究課題
近年の生活習慣病の一次予防と重症化予防のための多因子・集約的介入モデルのエビデンスの集積にも関わらず,エビデンスと実践のギャップが存在し,健康増進の各種施策は住民・患者の適切な行動変容と医療側のエビデンスの適用に必ずしも結びついていない.本研究は個人の健康行動や生活習慣修正に関する行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)に着目し,①「行動変容プロセスと行動との関連」,②「行動変容プロセスと生活習慣病発症・重症化との関連」③「医療者のプラクティスパターンを中心とした行動変容プロセス並びに行動,アウトカムへの影響因子」を大規模な一般住民並びに生活習慣病通院患者コホートを用いて検討し,住民・患者の行動変容に繋がる効率的な多因子・集約的介入法を探索することを目的とする.過年度の解析に引き続き,大規模な日本人一般住民集団コホートのデータを用いて解析を継続し成果を得た.その内,健康的な生活習慣(禁煙、適正体重の維持、適切な飲酒、定期的な運動、および健康的な食習慣)の遵守度と全死亡,癌死,心血管死の関連とそれに対するCKDの影響の検討では,総死亡と癌死のリスクはCKDの重症度と関わりなく健康的な生活習慣への行動変容(遵守された生活習慣の増加)とともに減少したが,心血管死のリスクはCKDによって修飾され(相互作用p = 0.07),不健康な生活習慣とCKDが相乗的に増加させることが示され,心血管死の抑制には行動変容とともにCKDそのものの進展予防が重要であることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
当初計画の解析が進捗するとともに,関連する解析も並行して実施できており成果の公表が進んでいる.
引き続き行動変容ステージの経年変化パターンを変数とした要因解析を進める.さらに生活習慣因子,健康行動因子の経年動態観点から多面的・詳細な解析を強化し,診療実践に応用可能なエビデンスを創出してゆく.
COVID-19感染症拡大の影響のため,成果発信,研究打ち合わせ等のための国内・国外旅費が計画通り執行できなかった.次年度も旅費の使用を予定するが,COVID-19感染の状況により,発展的なデータ解析に向けたデータセットの編集等に関連する人件費・謝金等に使用する計画である.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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