研究課題
近年の生活習慣病の一次予防と重症化予防のための多因子・集約的介入モデルのエビデンスの集積にも関わらず,エビデンスと実践のギャップが存在し,健康増進の各種施策は住民・患者の適切な行動変容と医療側のエビデンスの適用に必ずしも結びついていない.本研究は個人の健康行動や生活習慣修正に関する行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)に着目し,①「行動変容プロセスと行動との関連」,②「行動変容プロセスと生活習慣病発症・重症化との関連」③「医療者のプラクティスパターンを中心とした行動変容プロセス並びに行動,アウトカムへの影響因子」を大規模な一般住民並びに生活習慣病通院患者コホートを用いて検討し,住民・患者の行動変容に繋がる効率的な多因子・集約的介入法を探索することを目的とする.過年度の解析に引き続き,大規模な日本人一般住民集団(特定健診受診者)コホートの個人経年突合データを用いた解析を継続し次の成果を得た.1)ベースラインにおける自己申告の歩行習慣と年間30%の推算糸球体濾過値(eGFR)低下との関連を解析し,自己申告の歩行習慣が、eGFR低下速度の有意な抑制と関連すること,この関連が運動による代謝因子の改善とは独立していると考えられることを示した。2)体重減少と経年的な蛋白尿新規出現の関連を解析し,肥満者(BMI 25 kg/m2以上)の体重減少(BMI-1~-5 kg/m2)は蛋白尿新規発症の有意なリスク低下と関連することを示した.
2: おおむね順調に進展している
当初計画の解析ならびに関連する解析も並行して実施できている一方,コロナ禍で成果の公表の予定の変更を余儀なくされている..
行動ならびに行動変容ステージの経年変化パターンを変数とした要因解析をさらに進める.さらに生活習慣因子,健康行動因子の経年動態観点から多面的・詳細な解析を強化し,診療実践に応用可能なエビデンスを創出し成果を発信してゆく.
COVID-19感染症拡大の影響のため,成果発信,研究打ち合わせ等のための国内・国外旅費が計画通り執行できなかった.次年度も旅費の使用を予定するが,COVID-19感染の状況により,発展的なデータ解析に向けたデータセットの編集等に関連する人件費・謝金等に使用する計画である.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
J Nephrol
巻: 34 ページ: 1845-1853
10.1007/s40620-021-01041-x.
Clin Exp Nephrol
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10.1007/s10157-021-02114-8.