研究課題
初年度(2018年度)は主に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)あるいは肝内脂肪蓄積量と2型糖尿病(T2DM)との直接的関係について横断的に検討を行った。2018年度の検討から、T2DMの併存や発症リスクとNAFLDとの関連は直接的でなく内臓脂肪蓄積を介したものであることが示唆され、更に、肝内脂肪蓄積は内臓脂肪蓄積との相互作用を介してT2Dに関連することが示唆された。上記の検討を基に2019年度では、横断研究の項目中、NAFLDや生活習慣病と関連する新規因子の探索として、NAFLDがT2DMを発症させる原因物質の候補の1つとして血漿中キサンチン酸化還元酵素(XOR)活性を検討した。任意期間中の健診レジストリからアルコール多飲者、血糖降下薬や尿酸降下薬内服者を除いた142名を対象として。インスリン抵抗性(HOMA-R≧2.5)に対するNAFLDの関連性を多変量ロジスティック解析にて検討した。インスリン抵抗性に対してNAFLDは内臓脂肪面積と独立した説明因子であったが、XOR活性を同解析モデルに投入するとNAFLDの関連性が消失し、XOR活性が説明因子として示された。このことから、NAFLDでは肝内のXOR活性を介してインスリン抵抗性を惹起し、内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性と合わさって糖尿病発症の要因となる可能性が示唆された。長期目標であるコホート研究については、2015-2016年度にエントリーした対象者のフォローアップデータの回収を順次開始した。3年後以上の再診率がまだ低いため、2020年度までデータ回収を継続する。
3: やや遅れている
横断研究項目については概ねタイムスケジュールに沿った進捗であるが、コホート研究については、3年後以上の再診率がまだ低いため、2020年度までデータ回収を継続する必要がある。
横断研究については、症例数を増やして解析を継続する。コホート研究に関しては、2015-2016年度にエントリーした対象者の3年後以上の再診率がまだ低いため、2020年度までデータ回収を継続する。また、解析対象者数が目標よりも少ない場合は、エントリー期間の延長等の研究計画修正も考慮に入れる。
キサンチン酸化還元酵素活性を測定している三和化学研究所との別共同研究課題と共通する対象症例が多かったため、当該研究におけるキサンチン酸化還元酵素活性の測定費を大幅に節約することができた。次年度ではこの予算を使用して、別の候補物質の探索等に有効活用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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