研究課題
コロナ禍で海外出張自粛などの影響で、海外の研究室に実験にいけず、もっとも重要な「各種脂肪酸の違いによるタンパク質1分子の機能調節の検討」に関する実験ができずに困っている。このような事情により本年度は本研究課題の”1分子レベルでの解析”から少し間口を広げ、脂質輸送等に関連する膜タンパク質について”細胞”を対象とした研究を行ってきた。対象とした細胞は、核を持たない成熟赤血球(=宿主からの影響を排除)に寄生するマラリア原虫とした。マラリア原虫はコレステロール、脂質等を生存のために必須因子とするものの、de novoのコレステロール合成経路を持たないため、外部環境、培養環境から取り込む必要があり、脂質輸送、コレステロール輸送などの輸送機序に不明な点が多いものの、インプットとアウトプットが明確である。このことから、脂質輸送に関わる膜タンパク質の機能解析に適した細胞と言える。さらに、人間が小腸内でコレステロールの取り込みに利用している膜タンパク質(NPC1L1)と相同性のある膜タンパク質を持っている可能性が報告されている。本来であればこの原虫由来膜タンパク質を精製し、タンパク質1分子に対する多価不飽和脂肪酸などの影響を1対1で解析する計画であったが、近年の世界状況を鑑み、細胞全体を対象としたタンパク質の機能解析、細胞内局在、原虫の感染ステージの違いによる膜タンパク質発現、阻害剤と脂質輸送異常との関係などについて細胞生物学的、構造学的に解析を進めている。
4: 遅れている
コロナ禍で海外の研究室に実験にいけないため遅れている。メーカーに問いあわせた結果、日本に輸出した経緯がないことから、目的の装置が日本にないことだけは確実である。当大学内でなくとも、日本国内のどこかに装置があればデータを取得できる可能性が出てくるが、それができないので、一番肝の実験が完全に止まっている。日本側、海外側でのコロナ禍状況にも注意しなければならないことから、現在は本研究課題を細胞レベルでの実験まで広げて考え、細胞内での脂質輸送等に関連するタンパク質について研究を進めている。
本研究課題は2年の延長を行った。コロナ禍が早く収まって、日本側、相手国側の状況が許せば、一カ月ほど実験に行き、はやくデータを取得し投稿論文までもっていきたい。
コロナ禍で実際に行うはずの実験ができていないため、現在、代案の研究を行っている。現状を鑑み、2年ほど研究期間延長を行ったため、残高をゼロ以上としている。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Parasitology International
巻: 83 ページ: 102369,102376
10.1016/j.parint.2021.102369
巻: Epub 2021 Dec 18 ページ: 102532
10.1016/j.parint.2021.. Epub 2021 Dec 18.