研究実績の概要 |
(1) 低グルコース培地(5.6mMのグルコース(ブドウ糖)培地)で培養したラット初代培養心筋細胞(心筋細胞)に4 mMの「毒性終末糖化産物(Toxic AGEs, TAGE)前駆物質」であるグリセルアルヒデド(GA)を添加し、顕微鏡観察により拍動を、WST-8法により細胞生存率を計測した。平成30年度の実験では、高グルコース培地で培養した心筋細胞では、4 mMGA添加により、拍動低下と細胞死が同時に進行すると考察した。しかし、高グルコース条件下においては、低グルコース条件よりも、WST-8試薬の基質であるNADHが増加しており、GA添加に対し、時間依存的に減少した。しかし本年度の研究により、GA添加による拍動低下と細胞死は、異なる時間に起こっている可能性が示唆された。拍動は停止しているが、細胞死を起こさない条件で、2次元電気泳動法を駆使し、TAGE化蛋白質の解析を行い、複数のTAGE化蛋白質が生成することを明らかにした。現在、これらの同定作業中である。 (2)ラットの正常な血中TAGE量の100倍に相当する濃度の「TAGE化ウシ血清アルブミン」を、心筋細胞に添加し、24時間と48時間後の拍動を計測し、48時間後の細胞生存率を測定した。その結果、拍動低下や細胞死生存率低下は認められなかった。 (3)心筋細胞を保護する機能をもつヒト心臓線維芽細胞や、心筋細胞と同じ横紋筋に属するマウス骨格筋筋芽細胞も、GA添加によりTAGEを生成・蓄積して細胞死を引きこすことを明らかにした。 (4)動物実験の予備実験として、高果糖ブドウ糖液糖を摂飲したWisterラットの肝臓のTAGE量、血中TAGE量を測定し、腎臓に発現したAGEs受容体の一種Receptor for AGEsの発現を解析した。 (5)現在、TAGEや1,5-AF-AGEsの定量に用いているSlot blot法の改良に取り組んだ。
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