研究課題/領域番号 |
18K11140
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
尾方 寿好 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (80415364)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 他動運動 / 歩行 / 前頭前野 / 酸素化レベル |
研究実績の概要 |
本研究では、歩行中の四肢から脳へ伝わる求心性刺激が、前頭前野の活動性に及ぼす影響を明らかにすることを最終目的とする。このために、本年度では、①四肢を他動的に動かすための器具の開発、②立位姿勢にて他動的に脚を歩行様に動かした際の前頭前野の酸素化動態を、近赤外線分光法装置により測定される酸素化ヘモグロビン濃度の変化から求めた。①については、昨年度の課題として残されていた、歩行に付随する腕振り動作を実現するための器具を完成させた。この器具では、コンピュータ制御により一定のリズム・動作範囲で、腕を他動的に振らせることが可能である。②については、11名の健常成人男子(20.2±1.3歳)を対象とした。被験者は3分間の静止立位姿勢を維持した後、1分間の他動歩行が課された。歩行動作のテンポには1分間に40歩、80歩、120歩に相当するテンポの3種類を採用し、これらを順不同で実施した。他動歩行中の前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度は、3種類の試技間で有意差は認められなかった。静止立位姿勢時の前頭前野酸素化ヘモグロビン濃度のレベルと比較して、他動歩行時の酸素化ヘモグロビン濃度のレベルは下回ることはなく、他動歩行開始50秒目以降には静止立位時よりも有意に上昇した。動脈血圧については、120歩/分の他動歩行時のみで静止立位時のレベルを上回った。また、終末呼気二酸化炭素分圧については、3種類すべての他動歩行中において静止立位時よりも上昇することが明らかとなった。 以上より、立位歩行中の脚動作のテンポに関わらず前頭前野の酸素化動態は一定であり、静止立位以上のレベルに維持されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の課題として残されていた、他動的な腕振り動作を課すことができる器具の開発を完了させることができた。一方、他動腕振り動作による前頭前野の酸素化動態についての実験を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの影響でヒトを対象とする実験を控える状況が生じたため、来年度以降の検討課題となった。また、本年度は、立位歩行中の脚動作のテンポが前頭前野の酸素化レベルに及ぼす影響について検討し、昨年度実施した研究内容をさらに深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、他動的な腕振り動作による前頭前野の酸素化動態についての影響を明らかにする。また、仰臥位姿勢での他動歩行による前頭前野酸素化動態について、2018年度に実施した内容をさらに深める検討を行う予定である。具体的には、通常歩行に近いテンポ(120歩/分)で仰臥位他動歩行を行い、その際の前頭前野酸素化動態について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、予定した実験「他動的な腕振り動作時における前頭前野酸素化動態」の実施を延期した。そこで、この実験を2020年度に実施し、この実験に必要な消耗品費を繰り越すこととした。
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