研究課題/領域番号 |
18K11145
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
福永 幹彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (90257949)
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研究分担者 |
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 准教授 (20411506)
神原 憲治 香川大学, 医学部, 教授 (90440990)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光暴露量 / 自律神経機能 / 心身症 / 光照射療法 |
研究実績の概要 |
昨年入院患者における、活動量、光暴露量(総光暴露量、1000Lux以上の光暴露時間)と心理指標(HADS、SF-8、SSS-8、Euro-QOL)、自律神経機能(CVrr)の関係につき検討し、9例ではあるが、光暴露量(1000Lux以上の光暴露時間)と自律神経機能(CVrr)の間に正の相関を見いだすことができた。ただし予定症例に達しなかったため、研究期間を2019年7月まで延長し、18例まで症例を追加した。対象18名の平均光暴露量中央値は31.95Lux、1000Lux以上の暴露時間は中央値414秒/日であった。1000Lux以上の光暴露時間と自律神経機能(CVrr)の相関については、昨年度の検討ではみられていた、両者間の正の相関は失われ、全く相関がみられないという結果となった。 症例エントリー期間は昨年とかわらず、季節変動の影響は大きくないと考えられた。原因を検討したところ、追加症例のうち3例は、昨年にはみられなかった光暴露時間が600秒以上であり、この3例がすべてCVrr変化量がマイナスまたは0近くという低値であったことが、相関が失われた大きな原因と考えられた。 入院中光暴露時間が長い患者は、すなわち外出などが可能な患者であり、入院時よりCVrr値の低下がなく、二週間の入院期間での変化でみると変化は少なくために相関が失われたのではないかと推測された。これを踏まえて、次年度実施の光暴露介入研究においては、介入前の光暴露時間が600秒以下のものと、それ以上のものとに分けて、結果を解析する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
照度計、活動量計の装着と心理テストの記入が必要である。心療内科入院患者は、心身ともに疲弊状態にあり、日常生活が困難な患者がほとんどである。心理テスト記入といった軽作業ですら負担になることも多く、入院患者の研究への参加の同意取得が想定したよりも困難であった。このため一年間での研究エントリー患者数が想定を下まわったことがもっとも大きな研究遅延の原因となった。一年遅れとなったが、本年度でパイロット研究に必要なデータ収集は終了した。 しかしデータの解析において、昨年度途中解析で相関が得られると推定していた、光暴露時間と心身症患者の自律神経機能変化の間に正の相関が認められず、仮説の再検討が必要になっている。原因については、光暴露時間がある一定の時間より多いもので、自律神経機能の改善と暴露時間に相関がなくなるという現象がみとめられ、これが大きな要因と考えられた。 しかし、光暴露時間の少ないものでは、光暴露時間に応じた、自律神経機能の改善が認められるため、つづく本研究では、介入として光暴露量の多寡を調整し、自律神経機能などの改善状態を検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初、次段階として、心身症患者への機器を用いた光照射介入を予定していたが、これまでの検討から参加者全員に光照射介入を行うことの妥当性に疑問が生じている。 このため、より自然な形での光暴露を用いることとし、機器による光照射ではなく、光量の異なる二条件、病院内廊下と屋外遊歩道を用いて、この両者間の差を検討することとした。 実際には、同意を得られた患者に対して、入院期間中の光暴露量と自律神経機能を継続測定、介入として1日一回10分間の屋外庭園歩行または病棟内廊下歩行を実施し、その光暴露時間と自律神経機能の改善の関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イタリアでの国際心身医学会にて成果発表予定であったが、研究者本人の体調不良があり、参加できず、旅費の大幅な不支出があった。次年度は本研究がはじまるため、唾液コーチゾール、アミラーゼ測定。光照射機器の購入。さらにはロシアで開催予定のアジア心身医学会での成果発表を計画しておいる。これにより前年度未使用助成金を使用する。
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