研究課題/領域番号 |
18K11147
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
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研究分担者 |
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10368532)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 転写因子 / ChREBP / 糖・脂質代謝 / スクロース |
研究実績の概要 |
糖・脂質代謝に関与する一連の酵素群の発現調節を担っている転写因子ChREBPは、肥満等を伴うメタボリックシンドロームの成因となる重要な因子であることが分かりつつある。我々は、ChREBPの欠損マウスを保有しており、従来より本マウスの解析を進めており、表現型として肝臓や脂肪組織において糖・脂質代謝の低下を認め、さらには高炭水化物食の負荷でも体重増加を認めないことなどを明らかとしてきた。 本研究では、この体重増加を認めない原因を追究し、ChREBPの欠損あるいは活性化阻害が示す抗肥満効果のメカニズムを解明するとともに、ChREBP阻害剤の開発へと発展させようとするものである。 高炭水化物食として高ショ糖食を与えたところ体重増加が野生型マウスと比べて少ないことから、小腸からの糖分吸収に阻害がかかっていると予想した。そこで単糖の吸収の役割を果たすグルコーストランスポーターの発現量を確認したところ、特にフルクトースの選択的に吸収するGlut5の発現がKOマウスで著しく低下していることを突き止めた。Glut5はフルクトースの濃度に応じて誘導されるわけだが、そもそも二糖類であるショ糖が単糖であるグルコースとフルクトースへと消化されていないと考えた。そこで消化酵素であるスクラーゼの発現量を検討した結果、やはり予想通りKOマウスでスクラーゼの発現量の低下を認め、酵素活性も低下していた。以上のことから、ChREBP KOマウスでは小腸においてスクラーゼの酵素活性が低下することでショ糖の消化が抑制され、その結果としてGlut5の誘導も低下しフルクトース自体の吸収に阻害がかかることで体重が増加しないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ChREBP KOマウスに高ショ糖食を与えても体重増加がそれほど認められない原因の追究が本年度の研究課題であった。 体重増加が認められない主な原因が、小腸におけるスクロースの発現量低下と、Glut5の発現量低下であり、その結果としてショ糖およびフルクトースの吸収に阻害がかかり、たとえショ糖食を与えても体重が増加しないことが分かった。以上の理由から、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、スクロースおよびGlut5の発現調節をChREBPが直接行っているのか否かをin vivoの条件で検討を行う必要がある。そのために、スクロースおよびGlut5の発現調節に関わるプロモーター領域を含む遺伝子配列を導入したレポータージーンを構築し、転写活性などを細胞レベルで検討する予定である。 またChREBP遺伝子のノックアウト細胞やノックイン細胞を作製し、スクロースやGlut5の発現量などを解析することでも確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通り助成金を使用したが、どうしても端数が生じてしまった。 次年度の使用計画として、遺伝子工学の為の試薬類、細胞培養関連の培地や試薬類、その他プラスチック類など消耗品の購入を予定している。
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