研究課題/領域番号 |
18K11150
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉仲 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80466424)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 文法推論 / 計算論的学習理論 / 有限状態オートマトン / 文脈自由文法 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,近年の文脈自由言語に対する分布学習アプローチを発展させ,分布学習可能で一意標準形を持つ文脈自由言語族を探究することを目的としている.2021年度は,シンボリック重み付きオートマトンの質問学習と,文脈自由文法の分布学習アプローチの可能な拡張を中心に研究を進めた.文脈自由文法は有限状態オートマトンの拡張とみなすことができるため,有限状態オートマトンの学習可能性についての理解を深めることも重要である.古典的な有限状態オートマトンの2つの拡張である,重み付きオートマトンと,シンボリックオートマトンのそれぞれについて,質問学習に関する既存研究が存在していたが,これらを融合,発展させ,これらの双方の利点を併せ持った拡張である有限状態オートマトンについて,効率的な質問学習が可能であるための必要十分条件を明らかにした.その他,この拡張オートマトンの定義する関数を代数的に特徴づけることに成功した.これは古典的な重み付きオートマトンに関する同種の結果の一般化となっている.また,従来の分布学習では,いかなる文字列と文脈の結合が学習対象の言語に属する文字列を形成するか,という文字列と文脈の関係に焦点をあてていたが,これに対して,学習対象言語に属さない文字列を形成する文字列と文脈の関係をとらえた分布学習について考察した.結果として,新たな分布学習可能な言語族階層を得ることに成功し,分布学習理論を発展させることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では文脈自由文法の非自明な部分族の標準形の合理的な定義を模索している.多様な学習可能性に関する結果が得られている点は十分な進捗といえるが,標準形に関して現在までのところ得られている成果は,文法サイズが指数的に大きくなるという意味で,否定的な結果にとどまっている.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに可代入文脈自由言語の単純な拡張であるk,l-可代入文脈自由言語族に対する文法の標準形が難しいという知見を得たが,文字列文法ではなく木文法等における可代入文脈自由言語について研究をすすめる.また,特にこれまでの研究期間で特に着目していた finite context property (FCP) は学習を可能にする制約ではあったが一意標準形を与えるにはまだ弱すぎるため,一意標準形を持つような制約について考案する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が予想よりも長期化し,学会参加や研究協力者との研究打ち合わせがほとんどできない状況になり,旅費に余剰が生じるとともに研究に遅れが生じた.その分,次年度には積極的に学会参加や研究協力者との議論を増やし,研究を推進し遅れを取り戻す.
|