研究課題/領域番号 |
18K11152
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
天野 一幸 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30282031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計算量理論 / 充足可能性問題 / 数理計画 / しきい値論理回路 / 計算機援用 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで理論的解析が主であった計算複雑さの解析に、計算機実験を核心的要素として組み込んだ新たなアプローチである、実験計算量理論の確立を目指すものである。これに向けた取り組みを通じて、今年度得られた主な成果は以下の通りである。 1.論理回路モデルのなかでも重要な、しきい値回路モデルにおける計算複雑さについて、これを多項式しきい値関数の重さと呼ばれる尺度の解析を通じて議論する新たな枠組みを開発した。特に、線形しきい値関数として表現可能な論理関数を、任意の次数で多項式表現する際の係数和の上下界が、しきい値回路モデルにおける計算複雑さの解析に非常に重要であることを発見し、これを理論的言明として定式化した。これについては、計算複雑さの理論における重要な成果に繋がることが期待されるため、更なる進展を目指し、本年度も特に重点的に研究を継続することとする。 2.離散構造に関する様々な問題に対して、計算機援用のもと解析を行い、これまで未知であったいくつかの性質を明らかにすることに成功した。例えば、ポリオミノと呼ばれる構造の2次元空間への最疎な充填方法を計算機実験と理論解析の相補的アプローチにより明らかにしたことや、ある種の並べ替え問題に関する最大手数についての新たな下界を、大規模な計算機実験を通じて明らかしたこと等が重要な成果である。 以上の成果は、英文論文誌1編、および、英文プレプリント2編を通じて発表を行うとともに、更なる展開に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で扱う問題群が、当初の想定より広範なものとなり、多くの追加的な実験検討を行う必要が生じたこと、および、コロナ禍の影響により発表予定であった学会等がキャンセルとなったこと等もあり、研究期間の1年間の延長を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度として、これまでに得られた成果を深化させるとともに、成果のとりまとめを行う。特に以下の点について重点的に研究を進める。 1.これまでの研究で得られた、しきい値論理回路モデルにおける複雑さの解析を、数理計画問題に還元し議論する技法を発展させ、既知の上下界の改良を試みる。 2.離散構造に関する様々な基礎的問題について、計算機援用のもとに解析を行い、その結果より得られる知見をもとに理論的言明の形で定式化を試みる。 得られた成果は、国内外の学会や論文誌等、様々な媒体を通じて発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、発表予定であった学会の一部がキャンセルになり、主に旅費に残金が生じた。また、実験に使用する予定であった計算機資源について、他の研究費で購入したものが一部流用できることとなったため、備品費に残金が生じた。これら残金は、今年度の学会参加等に関する旅費、および、計算機資源の増強に資する備品費として使用する。
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備考 |
離散構造の性質に関する2編のプレプリント(arXiv:2005.02645、arXiv:2103.08346)を公表した。
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