研究課題
挿入・削除誤りでは,通常の反転誤り等と異なり,受信系列の長さが送信系列と異なるため,各シンボルとインデックスが対応しなくなる.一意復号に関しては,t 個以下の削除を訂正できれば,合計 t 個以下の挿入・削除も訂正できるという,挿入と削除の対称性が知られている.本年度は,リスト復号と呼ばれる一意復号を緩和した誤り訂正に着目した.リスト復号では,復号結果として複数の候補を出力することを許し,リストサイズが1の場合に一意復号に一致する.小さなリストの出力を許すため,一意復号では達成できない誤り訂正半径を実現できる可能性がある.反転誤りに対しては,リスト復号の訂正半径を一般的に導出するための Johnson 限界が知られており,その限界を達成するための符号・復号法が提案されてきた.本研究では,挿入・削除誤りのリスト復号の訂正半径を知るため,Hamming 距離に対し導入された Johnson 限界を Levenshtein 距離を扱えるように一般化した限界を導出した.その結果,2元符号では,符号長 n のとき,0.707n 個の削除が発生しても,効率的にリスト復号できる可能性があることがわかった.また,定数 c に対し挿入誤りが cn 以下のとき,定数アルファベットサイズの符号で,リスト復号可能であることもわかった.導出した限界では,挿入と削除が非対称の関係になっており,リスト復号では一意復号と異なり,挿入と削除が異なるふるまいをすることが明らかになった.その他,一般化した Johnson 限界をもとに,与えられた半径内に存在可能な符号語数を導出するための Plotkin 限界についても,Levenshtein 距離において一般化した限界を導出した.この限界は,通常の Plotkin 限界を特殊な場合として含んでいる.
2: おおむね順調に進展している
Hamming 距離における Johnson 限界を,Levenshtein 距離へと拡張することに成功しており,研究は順調に進んでいる.
今回導出した一般化 Johnson 限界では,挿入と削除の非対称性は明らかになったが,その差がどの程度まで広がるのか,明らかになっていない.今回導出した結果を精錬化し,リスト復号における挿入と削除の訂正の限界を明らかにしたい.また,導出した限界は,組合せ論的な議論だけであり存在性が示されただけである.それを実際に実現する効率的な符号化・復号法の提案を目指したい.
研究調査・発表のための旅費が予定よりも少なくなり,次年度使用額が生じた.次年度の研究調査・発表のための旅費として使用予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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