研究課題/領域番号 |
18K11159
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安永 憲司 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50510004)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 誤り訂正符号 / 挿入・削除訂正 |
研究実績の概要 |
挿入・削除に対する誤り訂正問題に対し,前年度の成果より,補助通信路を仮定した場合,リスト復号の性能を一意復号に変換させることが可能であることが明らかになった. 本年度は,この考察をさらに深め,補助通信路を仮定しない場合の一意復号への変換方法を検討した.その結果,暗号技術として登場する相関達成不可能性を用いることで,リスト復号性能を一意復号に変換できることを明らかにした.この性質は,ランダムオラクルを用いることで達成することができる.Grossmanら (TCC2020) は,ハミング誤りの設定で,最適なリスト復号可能符号をもとに一意復号可能な符号を構成している.本研究では,挿入・削除誤りに対しても同アプローチが有効であることを示した.技術的には,挿入・削除では,この構成で必要な被覆符号に関する結果が知られていなかったが,挿入・削除のリスト復号可能性の結果 Hayashi&Yasunaga (IEEE IT 2021) を使うことで,この問題を解決した. その他,リスト復号可能性の結果に,確率的な議論を加えることで,挿入・削除誤り訂正能力と符号化率とのトレードオフ関係についての不可能性の限界式を与えることができた.この結果は,ハミング誤りにおけるイライアス限界に対応している.ただし,イライアス限界を特殊な場合として含む限界式ではない.理由は,挿入・削除に対しては,挿入のリスト復号性能が優れているという事実があり,これを活用して導出しているためである.導出された限界式は,漸近的な評価をした場合に特に優れている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一意復号における挿入・削除の非対称性が,様々な設定で成り立つことが明らかになり,また,リスト復号可能性の結果から,訂正能力と符号化率のトレードオフに関する不可能性を与えることができている.挿入・削除訂正の限界に関する新たな知見が得られているため,順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ランダムオラクルモデルにおいてリスト復号可能性を一意復号に変換できることが明らかになったが,挿入・削除では最適なリスト復号可能符号の存在性が示されていない.そのため,リスト復号限界に迫る符号の構成法を明らかにしたい.また,挿入・削除の訂正能力と符号化率のトレードオフについて,可能性と不可能性の間は狭まったが,可能性に関する結果が弱く,未解決領域が大きい.そこで,特に可能性,つまり符号化率と訂正能力の両方が高い符号の構成方法を明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議・国内会議いずれもCOVID-19の影響で現地開催されず,予定していた旅費が発生しなかったことが主な理由である.本年度は現地開催を計画している会議も多く,それらに参加することで使用する予定である.
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