研究実績の概要 |
挿入・削除を訂正する符号について,通信路を多項式時間アルゴリズムと考え,計算量制限通信路における挿入・削除訂正問題を考えた.特に,正の符号化レートをもつ一意復号可能な符号が存在する範囲を,挿入・削除レートに対して明らかにすることを目指した.挿入レート e,削除レート d((e,d)-誤りと呼ぶ)を訂正可能な q 元符号に関して,Bukh ら (IEEE IT 2017) による符号から e + d < 1 - 2/(q + q^(1/2)) に対しては符号化レート正の符号が存在することがわかる.一方,Guruswami ら (FOCS 2021) によって示された結果より,e + d > 1 - 1/q - O(1) の範囲ではそのような符号が存在しないことがわかる. 本研究では,(e, d)-誤りに対してリスト復号可能な符号があれば,計算量制限通信路を考えることで,r = min(e,d)/2 に対し,(r, r)-誤りを一意復号可能な符号を構成できることを示した.構成法は,入力相関困難性ハッシュ関数と呼ばれる暗号学的なハッシュ関数を用いており,そのハッシュ関数を h としたとき,リスト復号可能符号 C を使って,入力 x の符号語を C(x, h(x)) と計算すればよい.この結果より,(e,d)-誤りに対してリスト復号可能な符号として優れた符号があれば,それを一意復号に変換することができる.Hayashi, Yasunaga (IEEE IT 2020) で示された符号を適用した場合は,Bukh らの符号で示された達成可能性を超えることができないことも明らかとなった.また,(e,d)-誤りに対するリスト復号可能符号が大きな符号化レートをもつ場合,その符号化レートを訂正可能な誤りレートに変換できることもわかった.一方で,符号化レートが大きな符号で優れたリスト復号性能をもつ符号の構成法はこれまでに知られていない.
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