研究課題/領域番号 |
18K11162
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
楫 勇一 名古屋大学, 情報連携統括本部, 教授 (70263431)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 情報セキュリティ / ハッシュベース署名 / 指紋関数 / Winternitz署名 |
研究実績の概要 |
本年度の取り組みは,① 定数和指紋関数を用いたハッシュベース署名方式の研究,② Winternitzハッシュベース署名方式への鍵パンクチャ機構の導入の2つに大別できる. ①定数和指紋関数を用いたハッシュベース署名方式の研究 Winternitz署名方式では,一般的な指紋関数から得られる指紋情報にチェックサムと呼ばれる補助情報を付与することで,個々の署名の安全性を担保する.本研究では,ハッシュベース署名への利用に特化した「定数和指紋関数」を構成し,チェックサム機構を不要とすることで,安全性を損なうことなく各種計算の効率を改善する方式を開発した.また,定数和指紋関数の持つ数学的特性に着目し,ハッシュ連鎖の部分的構成手法を導入することにより計算効率がさらに改善できることを示し,そのような拡張によっても安全性が損なわれない(強存在的偽造不可特性を有する)ことを証明した. ②Winternitzハッシュベース署名方式への鍵パンクチャ機構の導入 Winternitz方式および①の定数和署名方式では,複数のハッシュ連鎖を利用することで鍵と署名を構成する.一定の安全性を保証するためには,あるトレードオフ関係の下で連鎖の数と連鎖の長さを決定する必要があり,そのトレードオフ制約により,署名方式の効率改善は限定的にならざるを得なかった.この問題を解消するため,メッセージ内容に応じて鍵および連鎖の一部を削除(パンクチャ)する仕組みを検討した.検討方式では,あらかじめ呼ぶなハッシュ連鎖を準備しておく必要があるため,鍵生成の計算量は増加するが,署名の作成・検証に必要となる計算量を抑制することができる.また,計算量の削減と同時に署名サイズの削減が可能となる場合もあり,既存のトレードオフ制約を超えた性能改善が可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハッシュベース署名は比較的古い技術であるが,耐量子安全性を有し,軽量な実装も可能であることから,近年再び注目を集めている.一方,シンプルで安全なハッシュベース署名の構成方法は限られており,今日においても,1980年台に提案されたWinternitz署名方式が広く利用されている状態である.本研究では,Winternitz署名のシンプルさと安全性はそのままに,より効率の良いハッシュベース署名の開発に成功した.開発方式は,Winternitz署名方式をベース技術として利用するXMSS, SPHINCSといった実用的な方式への展開も期待され,理論的にも,実用的にも,大きな意義を持つものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
定数和署名方式に鍵パンクチャ技術を組み合わせ,その効果を評価する.鍵パンクチャの弱点は,鍵生成計算量が比較的大きくなってしまう点にあるが,定数和署名向けに開発したハッシュ連鎖の部分的構成を適用することにより,鍵生成のための計算量を削減できる可能性がある.ただし,どの程度の計算量削減が可能であるかは現段階で不明であり,また,安全性への影響についても,これから検討を行っていかなければならない.2019年度の研究では,上記組み合わせを実現する具体的な構成法を示し,その効率と安全性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の研究活動では,安全性証明の構成等,理論的な取り組みが中心となった.結果的に,評価実験等への取り組みが相対的に低下し,物品費の支出が当初計画を下回ることとなった.一方,想定を超えるペースで研究成果が得られつつあるため,その成果発表のための経費が今後増加することが予想される.次年度使用額については,それら成果発表のための諸経費充当することを計画している.
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