研究課題/領域番号 |
18K11167
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大下 福仁 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (20362650)
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研究分担者 |
井上 美智子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (30273840)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モバイルエージェント / モバイルロボット / 個体群プロトコル / 自己安定 / ビザンチン故障 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、外乱の起こりやすい環境において、複数のモバイルエージェント(自律的に移動する計算オブジェクト)が安定的に協調動作を行うための自己安定アルゴリズムの開発、また、その設計手法の確立を目指す。2019年度は、様々なタイプのモバイルエージェントを対象に安定的な動作を実現するアルゴリズムを提案するとともに、ビザンチン環境における汎用的な自己安定アルゴリズム設計手法を開発した。主な成果は以下の通りである。 (a) モバイルロボットのためのリング探索アルゴリズム:モバイルエージェントの一種であるモバイルロボットを対象とし、ロボットが動作する環境をリンググラフでモデル化したうえで、ロボットが協調して全てのノードを訪問するためのアルゴリズムを提案した。2018年度はロボットの視認半径が1の場合のアルゴリズムを提案したが、2019年度は視認半径が2以上の場合のアルゴリズムを提案し、視認半径を増やすことによって探索を実現するために必要なロボットの数を削減できることを示した。 (b) 個体群プロトコルモデルにおけるリーダ選挙・分割アルゴリズム:個体群プロトコルモデルとは、不規則に移動する低性能なデバイスをエージェントとしてモデル化したものである。本モデルにおいて、リーダ選挙を実現する緩安定アルゴリズム、同サイズの複数のグループに分割する状態数の少ない自己安定アルゴリズムを提案した。 (c) ビザンチン環境におけるモバイルロボットのための自己安定アルゴリズム設計手法:一部のロボットがビザンチン故障を起こし任意の動作を行う場合に対して、汎用的な自己安定アルゴリズム設計手法を開発した。本手法では、故障を起こしたロボットを他のロボットが捕獲することで、その他のロボットが安定的に動作するようにしている。また、捕獲したロボットを定期的に逃すことにより、自己安定性を実現している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、設計手法確立のためのケーススタディとして、2018年度の成果を発展させることで様々なモバイルエージェントに対するアルゴリズムを提案した。また、当初の計画としていた付加的な性質の付与についても、ビザンチン故障に耐性をもつ自己安定アルゴリズムの設計手法を提案することができた。また、この成果は汎用的な手法であり、2020年度に予定していた研究の一部を先に実現することができた。そのため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、以下の研究を実施する。 (a) 付加的な性質をもつ自己安定アルゴリズムの開発:従来システムで多く研究されている、故障封じ込め(故障発生時にその影響を限定的な範囲に抑える)、安全収束(部分的に条件を満たした目的状態に短時間で収束し、その状態を保ったまま条件を満たした目的状態に収束する)などの概念を、エージェントシステムに適用可能かどうかを2019年度に引き続き検討する。 (b) 汎用的な自己安定アルゴリズム設計手法の開発:これまでに提案した自己安定アルゴリズムの実現手法を統合し、汎用的な自己安定アルゴリズムの設計手法を開発する。 (c) 従来システムからエージェントシステムへのアルゴリズム変換手法の開発:従来システムの自己安定アルゴリズムを、エージェントシステムへ効率を保ったまま変換する手法の開発を目指す。
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