研究課題/領域番号 |
18K11168
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大舘 陽太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (80610196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FPTアルゴリズム / 木構造 / 木幅 |
研究実績の概要 |
特殊木構造を用いた固定パラメータ容易アルゴリズムの高速化手法および関連する問題の計算複雑性を研究し,今年度は主に以下の成果を得た. ・情報拡散ゲームFlood-Itの固定パラメータ容易性を研究し,木構造に基づいたパラメータを用いた容易性および困難性を明らかにした.また,拡散させる位置に制限がある場合とない場合の差を研究し,制限があってもかかる手数はたかだか2倍であることなどを示した. ・木構造を持つグラフクラス上での独立集合遷移問題に対して,未解決問題となっていた計算量を明らかにした.独立集合から彩色可能集合へと,さらに一般化した問題も研究し,彩色数とグラフクラスに関するある完全な計算量分類を与えた. ・安全集合と呼ばれる構造を発見する問題の固定パラメータ計算量を研究した.これまで分かっていた木分解に基づくアルゴリズムを一般化し,より大きな対象を扱えるアルゴリズムを設計した.また,計算量理論におけるある標準的な仮定のもとでは,特殊木構造を用いてもこれ以上は速くはできないという限界も示した. ・部分グラフ同型性判定問題に対して,パターングラフが小さくない一般の場合の固定パラメータ計算量や,禁止部分構造による計算量の変化を研究した.禁止部分構造に関しては,ほぼ完全な計算量二分法を与えた.その副産物として,多くの固定パラメータ容易性および困難性に関する成果を得た.特に,頂点完全性 (Vertex Integrity)に関する固定パラメータ容易性は既知の結果を大きく改善するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的どおり,木構造を用いたアルゴリズムの高速化や計算量解析が順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までは個々の重要問題の解決に取り組んでおり,木構造と特殊木構造を活用したアルゴリズムや,高速化の限界の解明が進んでいる.今後は,これまで得られた知見を用い,一般的な高速アルゴリズム設計手法の確立を進める.また,得られたアルゴリズムの最適性検証も行う.そのためには,充足可能性問題の難しさを仮定した,ETH下界やSETH下界を用いた,計算量下界証明の技術を用いる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進んでいるが,物品購入の予定変更などにより残額が生じた.次年度の物品購入に使用する計画である.
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