研究課題/領域番号 |
18K11170
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
脊戸 和寿 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (20584056)
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研究分担者 |
長尾 篤樹 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20802622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強指数時間仮説 / 充足可能性問題 / 分岐プログラム |
研究実績の概要 |
本研究では強指数時間仮説の反証に向けた基礎研究を行うことを目的としている. 節の長さが無制限である和積標準形の充足可能性問題には,全探索より指数的に高速なアルゴリズムが存在しないという仮説である強指数時間仮説が知られている.この仮説下では,一部の多項式時間アルゴリズムや指数時間がアルゴリズムが,現在知られている計算時間から改良が不可能であることが示されている. 本研究では,論理関数がどのような構造を持てば全探索よりも指数的に高速なアルゴリズムを構築できるかを明らかにし,仮説の反証の障壁を見出すことを目標としている.特に既存研究で行われてきた論理回路の充足可能性問題ではなく,分岐プログラムの充足可能性問題を中心に研究を行っている. 節の長さが無制限である和積標準形は幅2分岐プログラムで表現することが可能であり,分岐プログラムはグラフの形式で表現できるため,何らかの構造を見出すことが可能ではないかと考えている. 本年度は,既存のk回読み分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズムについて,k=3の場合にはさらに高速なアルゴリズムが存在することを示し,国際論文誌に投稿した.また,前年度に構築した線形サイズの幅2分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズムを改良し,同じ計算時間で充足解の個数を計算可能なアルゴリズムを構築した.これらのアルゴリズムは全探索よりも指数的に高速なアルゴリズムである.また,幅3分岐プログラムの特殊ケースである幅3置換分岐プログラムにおける充足可能性問題のアルゴリズム構築に取り組み始めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は多項式サイズの幅2分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズム構築を目標としていたが,構造をうまく利用するアルゴリズムが構築できなかった.どのような構造を持つかは解明しており,明らかに現アルゴリズムの改良が可能であると考えているが,まだ形にできていない.このため,同時並行で行なっていた幅3分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズム構築にも遅れが生じている. 論文投稿が遅れ,今年度は研究成果が学術論文として出版されていないことも研究の遅れと考えている. 査読に1年程度かかることが多いことも要因であるが,上記に記載したとおり,全体的な研究進捗が遅れていることが最大の原因である. また,分担者や共同研究者とのミーティングを定期的に行うことができていなかったことも研究の遅れの要因であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
分担者や共同研究者とのミーティングを定期的に行うことで,もう少し密に連携し,研究を推し進める. まずは,幅3分岐プログラムの特殊ケースである幅3置換分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズムの設計を中心に行う. また,多項式サイズの幅2分岐プログラムの充足可能性判定アルゴリズムの構築にも力を入れる. これらと並行し,これまでの研究を部分的にでも学術論文として投稿できるように内容をまとめていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に参加予定であった学会等のイベントや研究打ち合わせがCOVID19により中止になったため,当初予定していた旅費の使用分が大幅に残ってしまった. 次年度では情報収集を兼ねた国際会議への参加を予定していたが,現時点では多くの国際会議がオンライン開催となり,国内での研究打合せについても現地に赴くことが非常に困難な状況となっている. 状況が回復次第,国内の共同研究者を中心に研究打合せを集中的に行うために,現地訪問をする予定だが,現状ではその見通しも難しい状況である. 状況によっては,物品に一部振り替えることも考えている.
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