研究課題/領域番号 |
18K11174
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
玉木 久夫 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20111354)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木幅 / 木分解 / パス的木分解 / 安全なセパレータ / ほぼクリークセパレータ / 固定パラメータアルゴリズム |
研究実績の概要 |
引き続き、目的とする固定パラメータアルゴリズムの基礎となる木幅アルゴリズムの開発を続けた。実験的研究のなかから、次のふたつの大きな発見があった。 1.実用上の興味のあるグラフにおける最適な木分解は、下に述べる意味でパス的であること。2.BodlaenderとKosterによって提案された木幅計算の前処理法である、ほぼクリークセパレータによるグラフの分解が、近年の木幅アルゴリズムの進歩によって実用上扱うことが可能になりつつある規模のグラフにおいても、非常に有効であること。これらについて順にのべる。 1.パス的な木分解 \alphaを1未満の正定数とする。n頂点グラフGの頂点集合Uは、|U| <= \alpha (n - |N_G(U)|)を満たすとき、\alpha小集合であるという。Gの木分解TのパスPは、次の条件を満たすとき、\alpha幹であるという。条件:P上のバッグの和集合をU_Pとするとき、G[V(G) - U_P]のどの連結成分も\alpha小集合である。Gの木分解は、\alpha幹を持つとき\alphaパス的であるという。実験により、木幅計算の対象として興味のあるグラフの多くが0.1パス的な最適木分解を持つことがあきらかになった。この事実に基づいた木幅アルゴリズムを開発中である。 2.ほぼクリークセパレータによるグラフの分解 グラフGのセパレータSは、Sの頂点vで、S-vがクリークであるようなものがあるとき、ほぼクリークセパレータと呼ばれる。SがGの極小セパレータでありかつほぼクリークセパレータであるとき、Sがクリークになるように辺を満たしてもGの木幅は増加しない。Gをほぼクリークセパレータにより分解すると、Gの木幅はこの分解の原子的な部分の木幅の最大値として求めることができる。PACE2017のベンチマークインスタンスに対してこのアプローチの有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的とする固定パラメータアルゴリズムによる組み合わせ列挙に本格的に取り掛かる前の、木幅計算アルゴリズムの研究に思った以上の時間をとられている。しかしながらこれは、真にインパクトのある結果を出すためには必要な時間であると考えている。研究計画調書で提案したアルゴリズムの計算時間は、パラメータである木幅に指数関数的に依存するため、最適に近い木幅の木分解を計算できるかどうかは、研究全体のアプローチにおいて死活問題であるからである。
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今後の研究の推進方策 |
木幅計算の研究については、その基礎部分についてある程度の見通しが立ってきたため、最終年度である2021年度には、固定パラメータ列挙のアルゴリズムのためにより多くの時間を投入する予定である。その方向性については、当初の計画と変わりはない。 また、木幅アルゴリズムについては、当初予期したよりもはるかに多くのアイディアと結果が得られたため、2021年度を初年度として採択された木幅実用計算の科研費プロジェクトのなかで、それらをさらに発展させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度において国際会議等のための海外出張が不可能になったことが主な原因である。今年度は国際会議への投稿を積極的に行い、海外出張が可能となり次第、現地参加のための旅費として使用する。
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