研究実績の概要 |
本研究は、組み合わせ列挙において固定パラメータ容易な前処理を行うことによって列挙自体は多項式遅延で行うアルゴリズムの開発を行うことを目的としている。ここで用いるパラメータは木幅であるため、前提として木幅を求める効率的なアルゴリズムは極めて重要である。研究の初期において前処理の方式を設計した後、木幅を計算する実用的なアルゴリズムの開発に注力した。 研究開始時に、厳密な木幅を求めることが可能なグラフの規模は、特にグラフが計算を容易にする構造を持っている場合を除き数十頂点からせいぜい100頂点程度であったが、この限界を押し広げることを目標に研究を行った。研究の初期においては、BouchitteとTodinca の動的計画法アルゴリズム(BT法)の実装法の改良を続け一定の成果を得た。同時に、同アルゴリズムの限界も見えて来て、さらなる限界を押し上げには、上界アルゴリズムと下界アルゴリズムの組み合わせによるしかないと確信するに至った。 上界アルゴリズムの研究における最も重要は発見は、上界計算におけるBT法の利用法である。BT法は、与えられたグラフGの潜在的極大クリーク(Potential Maximal Clique, PMC)すべての集合Π(G)を求め、どのバッグもΠ(G)の要素であるような木分解で幅が最小なものを動的計画法により計算する。Π(G)のかわりにΠ(G)の任意の部分照合にこの動的計画法を適用したとき、得られる木分解はGの木幅の上界を与える。「良い上界を与えるような、Π(G)の部分集合を探索する」という考え方は極めて強力であり、上界アルゴリズム研究の飛躍的な発展につながった。 下界アルゴリズムにおいては、グラフの縮約にもとづく下界を順次改良するというアプローチとその具体的な方法を開発し、大きな成果を挙げた。
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