研究課題/領域番号 |
18K11175
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
竹田 晃人 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70397040)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行列分解 / ベイズ推定 / スパース性 / ハイパーパラメータ調整 / 疎行列推定アルゴリズム |
研究実績の概要 |
当該年度は、スパース行列分解アルゴリズムに関するハイパーパラメータの調整法について重点的に研究した。 当該年度の前年度の研究成果として、ハイパーパラメータの適切な調整法を組み込んだ行列分解アルゴリズムを提案したが、当該年度は前述の提案アルゴリズムの挙動を継続して調べた。結果として、提案アルゴリズムによりスパースな分解行列解が正しく得られていることが分かり、考案したハイパーパラメータ調整法の信頼性が確認できた。さらに、スパース行列分解アルゴリズムのさらなる改善法を考案した。改善法は当初のアルゴリズムよりも高速にスパース行列解に収束することが実験的に分かっている。 またアルゴリズムの性質として、分解行列のランクが小さい場合には予め用意されたスパース分解行列解がほぼ正確に再現されること、行列ランクが大きくなるにつれ異なるスパース分解行列解が得られる傾向があることも判明した。ところで、スパース行列分解の解と予め用意した解との一致性は、与えられた行列分解問題の解の個数の問題と関係している。行列分解問題の解の個数の解析は重要だが、分野全体として現時点でも研究成果が少ないため、新たな知見を得るべく引き続き研究を行う予定である。 これらの研究成果は日本物理学会年次大会で発表されている。成果がまとまり次第論文化する予定である。 この他に行列分解問題に関連する機械学習の問題として、行列分解の手法を導入した半教師あり学習器の性質に関する研究を実施し、日本物理学会秋季大会で研究成果の発表を行った。その他にも機械学習に関連する研究を幾つか行っており、中には刊行化された研究成果もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べた通り、当該年度はアルゴリズムのハイパーパラメータ調整に関して重点的に研究を遂行した。学会発表も実施し成果は得られている。一方で、当該年度の前年度に実施したアルゴリズムのダイナミクスに関する研究等、本来論文化されるべき研究成果がまだ論文化されていないため、既に得られている成果を早急に論文化し学術雑誌へ投稿する必要がある。 研究の実施体制として、現在は研究代表者と研究室の卒業生とで研究を遂行しているが、当該年度はコロナ禍のために研究の打ち合わせ等に支障が生じた。このことが研究成果の公表の遅れの原因となったことは否めない。加えて、当該年度中に研究代表者は新たな研究プロジェクトに関わることになり、本研究課題のエフォートを下げざるを得ない状況であった。 以上より、本研究課題の計画はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、コロナ禍のために遅れていた研究成果の論文化および学術雑誌への投稿を進める。アルゴリズムのハイパーパラメータ調整法については、結果をまとめたうえで論文化を早急に進め結果を公表するよう努める。加えて、神経回路網理論の想起ダイナミクス解析法を利用した非スパース行列分解アルゴリズムのダイナミクス解析手法についても、既に得られている知見をもとに論文化を早急に進める。 本研究課題の残された問題として以下があげられる。まずハイパーパラメータ調整法を組み込んだ行列分解アルゴリズムの安定性の問題がある。このアルゴリズムは初期条件によっては挙動が不安定になることが判明している。そこで、安定的な求解のための初期条件を詳しく調べる必要がある。それと並行して、スパース行列分解アルゴリズムに対するダイナミクス解析を実施し、アルゴリズムによって得られた分解行列解のスパース性がどれだけ高いかを理論的に解析することを試みる。 研究の実施体制としては、これまで通り研究代表者および研究室の卒業生と共同で進める。ただし前述の通り、研究代表者は当該年度から新たな研究プロジェクトにも携わっているので、複数の研究課題を効率よく進めていくようにスケジューリングを工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究成果の公表のための旅費の使用額を多く見積もっていたが、コロナ禍のために学会等の研究集会がほぼオンライン化されたため、旅費がほとんど使用できなかった。オンライン学会等への対応用の機器に旅費使用予定分を転用したが、それでも残額が生じ当該年度の次年度へ繰越すこととなった。 繰越額については、次年度請求額と合わせて研究成果発表のための旅費として使用したいが、コロナ禍が継続しているために旅費への使用は引き続き難しそうである。旅費への使用が次年度末まで難しい場合は、本研究課題の遂行に必要なソフトウェアの購入や計算機設備の充実に使用する予定である。
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