半整数制約はポートフォリオ構築など実用上の応用も多いことが知られている。本研究では、半整数制約を持つような錐最適化問題に対する計算手法の構築を行った。特に、育種学などに現れる二次錐は遺伝子の多様性を維持する解を算出する上で重要であるが、特徴的な疎行列構造を持っており、この構造に活用することで計算手法の効率向上を行った。 本年度は研究最終年度ということで以下のような研究を実施した。 1.錐分割手法について、数値実験によって性能評価を行った。錐分割手法ではn次元の二次錐を3次元のn個の二次錐に分割することで、それぞれの二次錐に対する切除平面が解析的に求まることを利用する。ここで得られる切除平面は二次錐の疎構造を受け継ぐため、生成される混合整数線計画問題も疎構造を持つ。数値実験の結果、混合整数二次錐計画問題として直接求解した場合と錐分割手法では同等の計算時間で求解可能であった。また、問題の規模が大きくなった場合は、錐分割手法に外部近似の切除平面を併用するのが最も効率的であることが確認された。外部近似の切除平面は錐の次数が上がったときに効果が高いと考えられる。この結果については、SIAM Optimization 2021で発表されている。 2.半整数制約と錐制約を分離する手法について、改良を行った。従来手法では半整数制約の子問題と錐制約の子問題で制約が独立しており、それぞれの子問題で生成される点列が異なる点に収束するために、全体としての最適解を得ることが困難であった。今回の改良では制約の一部を重複させることで全体として良好な解への収束が容易となった。また、制約を重複させても特徴的な疎行列の構造はそのまま維持することが可能である。この改良により、混合整数二次錐計画問題と比較した場合に計算時間が数分の1程度に短縮された。
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