前年度に引き続き,全域木や最短路のような良いネットワークを設計すると同時にネットワークを築くためのスケジュールを求める問題について取り組んだ.この問題においては,全域木やs-tパスのような,指定された条件を満たす部分グラフを選び,その総コストを最小化すると同時に,その部分グラフを複数の同一な機械を使って構築するときのメイクスパンを最小化することを目的とする.この問題は2目的最適化問題であり,一方の目的関数に対する閾値条件の元で他方の目的関数を最適化する制約つき最適化問題に帰着して解を求めるアプローチや,2つの目的関数の凸結合を最適化する問題を解くというアプローチを考えることができる.2目的最適化問題に対しては,2つの目的関数をもつことから最適な解が一意に定まらず,そのため,多様な複数の解を求めることによって,利用者の要求に対してロバストな解を提示することができると考えられる.昨年度は部分グラフとして全域木を選ぶ問題について取り組み,制約つき最適化として帰着した問題に対して精度保証付きの近似アルゴリズムを提案した.本年度は昨年度の結果を拡張して,様々な部分グラフに対して同様の近似アルゴリズムが適用可能であることを示し,またその適用可能性に対する十分条件を示すことができた.この研究成果は2022年5月に開催された査読付き国際会議 International Symposium on Combinatorial Optimization に採択され,オンラインで発表を行った.本研究から得られた知見として,所与の最適化問題に対してロバスト性の高い解を一つ求める代わりに,複数の多様な解を用いてロバスト性を担保する,というアイディアを得ることができた.このアイディアに基づく研究を2023年から開始する予定である.
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