研究課題/領域番号 |
18K11180
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
安藤 和敏 静岡大学, 工学部, 教授 (00312819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルゴリズム / 超距離 / 系統樹推定問題 / 木距離 |
研究実績の概要 |
2021年度は,研究計画調書に記載した3つの研究計画のうち,「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」に関連する研究を行った.対象となる最適化問題は,p=1及び2に対するlp最小増加超距離木問題である.2020年度の段階でl1最小増加超距離木問題に対する部分木の交換操作に基づく局所探索アルゴリズムを開発済みであったが,本年度はそのアルゴリズムの計算時間が短くなるように改良を行った.また,改良したアルゴリズムに若干の修正を行うことによって,同じ計算時間でl2最小増加超距離木問題に対するアルゴリズムが得られることを示した.さらに改良アルゴリズムの実際的計算量を数値実験によって検証した. 本研究課題に関連する研究として「部分木距離を表現する木を求めるアルゴリズムの開発」を行った.超距離木を緩和した系統樹の概念として枝重み付き木があり,これに対応する相違写像が木距離である.この一般化に関連する最適化問題として,与えられた相違行列を木距離で近似する問題が超距離木最適化問題と同様に定義される.ここで最も基本的な問題は,任意の相違写像が与えられたときにそれが木距離かどうかを判定し,もしそうであればそれを表現する枝重み付き木を求める問題である.この問題は古くから多くの研究成果がある.部分木距離とは木距離を一般化した概念であり,重み付き木とその部分木の集合によって定義される.本研究では,与えられた任意の相違写像が部分木距離であるかを判定し,もしそうであればそれを定義する重み付き木とその部分木の集合を求める最適な時間計算量を持つアルゴリズムを開発した. 上述した研究以外にも,線形順序付け問題と呼ばれる組合せ最適化問題に対するアルゴリズムの研究,及び,この問題の最適解が満たすべき条件(強Condorcet条件)についての研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】に記載した通り,2021年度は本研究課題の研究計画「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」に関連する研究を行い,前年度までに得られていたl1最小増加超距離木問題に対する研究成果を改善し,かつ,その成果をl2最小増加超距離木問題に拡張した.また,本研究課題に関連する研究「部分木距離を表現する木を求めるアルゴリズムの開発」については,その研究成果を学術雑誌に出版することができた.さらに,「線形順序付け問題に対する強Condorcet基準についての研究」の成果を学術雑誌に出版することができた.これらは本研究課題における重要な成果である. その一方で,既に成果が概ね得られている研究計画「(3)k-連結完全距離による相違写像の近似理論の確立」及び研究計画「(2)閉路完全距離のグラフ表現と閉路完全距離による相違写像の近似」に関連する研究「閉路完全距離(これは超距離の一般化である)に対応する階層重複クラスタリングアルゴリズム」については,それらを研究成果としてまとめる作業がやや停滞している.これは,この研究課題の当初の研究計画以外の研究:「部分木距離を表現する木を求めるアルゴリズムの開発」及び「線形順序付け問題に対する強Condorcet基準についての研究」に多くの時間を使ってしまったことがその要因である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の3つの研究計画「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」,「(2)閉路完全距離のグラフ表現と閉路完全距離による相違写像の近似」及び「(3) k-連結完全距離による相違写像の近似理論の確立」について,予定通りの研究成果が得られているのであるが,これらの成果を論文として学術雑誌に掲載するという最終的なタスクが残っている.これらの研究成果を論文としてまとめて2022年度中に学術雑誌に投稿する予定である.また,「(1)最良近似超距離木問題に対する局所探索アルゴリズムの開発」に関連する研究については,これまでに得られた研究成果を,lp最良近似超距離木問題に対する部分木交換操作に基づく局所探索アルゴリズムの開発に対する応用について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた原因は,2021年度に予定していた海外出張のために旅費が使用されなかったためである.これはコロナ禍のために海外出張が不可能であったということがその一因であるが,同時に当初の研究目的以外の研究に多くの時間を使ってしまったために,2021年に予定していた研究成果の論文としてのとりまとめ作業に遅れが生じてしまったことも原因である.この次年度使用額については主に2022年度に行う研究成果発表のために使用する予定である.
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