本研究の目的は、(1) 最小距離 k 支配(制御や代表ともいう)集合の大きさと複雑ネットワークの大きさのアロメトリー現象(対数線形関係)、 (2) その現象の理論的仕組み、(3) その現象の応用 を明らかにすることである。 研究の全体を通じて、(1) 様々な複雑ネットワークに対して最小 k 支配点の数 D とネットワーク大きさ A とのアロメトリー log(D) ≒ a log(A) + b を実験的に示した。ただし a と b は、ネットワークに依存しない(kには依存する)定数である。特に興味深いのは、a<1 のことである。(2) に関しては、(1) の研究で示唆された、支配半径(1/2以上の節点を支配できる最小距離 k)が log(A) に比例するという複雑ネットワークにおけるスモールワールド性と、ダンバー数(一人の人間が同時に保持できる社会的接触の上限が約150人程度という人類学の説)、複雑ネットワークにおけるピラミッド構造の存在(本研究の内容)を仮定し、社会的ネットワークにおける上記のアロメトリーが理論的に成り立つことを説明した。(3) これまでの分析成果を応用し、適切な国会・議会議員定数とその割当について研究した。その結果、適切な国会・議会定数は、人口の劣線形関係にある(つまり、アロメトリーの係数 a が1より小さい)ことをデータ分析と理論分析の両方で発見した。さらに、適切な議席配分は、これまで採用されてきた(線形関係を想定した)人口比例原則ではなく、劣線形関係に合うように一人当たりの重みを計算して、それが同じとなるように配分すべきなことを考察した。 最終年度では、主に (3) の研究を行い、期間が延長されたこともあって、より広く深く考察することができた。現在インパクトの高いジャーナルに論文を投稿または準備をしている。
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