研究課題/領域番号 |
18K11186
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
佐久間 大 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 講師 (00434027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 待ち行列理論 / ゲーム理論 / エージェントベースモデル / セキュリティシステム |
研究実績の概要 |
不特定多数の一般利用者が存在するサービスシステムにおいて,警備側は一般利用者へのサービス品質(QoS)を維持しつつ,有事に備えて効率的な警備計画を立てなければならない。今年度は,悪意のある侵入者も含めた利用者全体を客,警備側をシステムにおけるサービス提供者とした待ち行列ネットワークによりモデル化を行い,効率的な警備計画を導くための手法を提案した。加えて,システムの混雑状況に応じて,システムの処理能力の動的な変化が,QoSに及ぼす影響を明らかにするため,窓口の処理能力が可変な流体待ち行列モデルについて,基礎的な解析も実施した。上記2項目について詳細は以下の通りである。[1]一般利用客へのQoSを考慮したセキュリティゲーム:待ち行列理論,ゲーム理論,最適化理論を用いて,侵入者の意図だけでなく,一般客のQoSも考慮した警備計画を提案した。警備側の制約は,一般客のQoSの保証であり,目的は侵入者の検挙確率の最大化とした。このとき,警備側がリーダー,侵入者がフォロワーのシュタッケルベルグゲームとしてモデル化を行い,警備計画を数理計画問題の解として得た。[2]窓口の休暇と系内仕事量に依存した処理速度もつ単一窓口待ち行列の定常解析:窓口の休暇があり系内仕事量に依存した処理速度をもつM/G/1待ち行列の定常解析を行った。特に系内仕事量の定常分布を計算可能な形として得るために,2つの場合について解析を行った。1つ目は,サービス時間分布が指数分布,もしくは,処理速度を線形な関数にした場合である。2つ目は,サービス時間分布が相型分布であり,処理速度が区間依存の一定値とした場合である.いずれの場合についても定常分布は,再生理論およびレベルクロッシング法を用いて導かれることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も単純な小規模待ち行列ネットワークにおける警備計画の定式化および数値計算アルゴリズムは得ている。今後,実システムでの有用性を検証するための,シミュレーションとの比較実験を行い,さらに成果について,国内外での研究発表を行う必要がある。また,本課題において基礎となる待ち行列理論に関する研究(仕事量依存型の待ち行列モデルの性能解析,待ち行列ゲームの理論解析)については国内外での発表実績がある。そのため,全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階の警備計画の導出アルゴリズムは,小規模かつ特殊な形状の待ち行列ネットワークを対象としている。そこで今後は,大規模かつ複雑なネットワークへの拡張を目指し,ジャクソンネットワークのような陽解が得られる待ち行列ネットワークにおける警備計画の導出や,小規模ネットワークに対する手法を再帰的に用いた近似解法を提案する。さらに,導出された警備計画の有効性を検証するために,待ち行列ネットワーク上のエージェント・ベース・モデルを構築し,シミュレーション実験を行うことにより,提案手法の有用性を検証する。また,利用者のQoSを評価するための基礎となる待ち行列モデルの解析も同時に進め,特に,利用者の意思決定も考慮した待ち行列ゲームの理論解析も行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の1年間,海外において在外研究であったため,その影響で予算を当初の計画通りに実施できていないでいる。さらに,2019年度末に発生した新型コロナウィルスの感染拡大により,当初計画していた研究集会への出張もキャンセルせざるを得ない状況であり,それも次年度使用額が生じた理由となっている。今後,国内・国際情勢が許し次第,国内外の研究集会へ参加し,研究成果を発表し,さらに,本課題で得られる手法の検証を行うための,シミュレーション実験に関わる高性能計算機を購入するなどして,できるだけ速やかな予算の執行に努める。
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