研究課題/領域番号 |
18K11186
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
佐久間 大 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (00434027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 待ち行列理論 / ゲーム理論 / エージェントベースモデル / セキュリティシステム |
研究実績の概要 |
重要施設を含む都市ネットワークにおいて,警備側は不審者(例えば,歩行者または車両)の発生および移動を考慮して,効率的な警備を行わなければならない。そのために,重要施設を含む都市ネットワークにおける警備側および不審者側の動きをモデル化そして解析方法を開発することは,効率的な警備を実施するために重要である。今年度は,不審者の発生が確率的である場合について,モデル化および解析を行った。上記に加えて,警備側と侵入側の意思決定の相互作用を解析するための基礎研究の一部として,待ち行列理論の観点から,人の意思決定が混雑現象に及ぼす影響について研究を実施した。詳細は以下の通りである。 1)不審者の発生が確率的である不審車両検問モデル 重要施設が円形領域の都市ネットワークの中心に位置し,さらに,不審車両が円弧上に確率的に発生し,重要施設に向かう状況に対して,離散時間型の空間的待ち行列モデルを提案した。ここでは空間的待ち行列モデルの推移構造が,状態依存型の推移構造をもつM/G/1型マルコフ連鎖であることを示し,性能評価指標(例えば,不審車両を取り逃がす確率)の数値計算アルゴリズムを導いた。 2)人の意思決定が混雑現象に及ぼす影響の基礎研究 待ち行列理論の観点から利用者の意思決定について,以下3つの基礎研究を実施した。1つ目は,受付期間のある待ち行列における客の到着時点分布について,待ち行列理論とゲーム理論の観点から解析を行った。2つ目は,対領空侵犯措置における航空機の配分問題を,待ち行列ネットワークによるモデル化および解析を行い,対領空侵犯措置の性能評価を行った。3つ目は,商業施設の混雑現象について,RFIDタグとPOSデータから得られる情報に基づき,機械学習および待ち行列理論を用いて,混雑現象の予測方法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不審者の発生が不確実である状況下で,不審車両検問システムの数理モデル(ここでは,空間的待ち行列)によるモデル化および解析方法を提案し,国内での研究発表を行っている。さらに,提案手法の実世界における実装の可能性を検証,特に,提案手法(例えば,性能評価指標およびそれに基づく検問車両の移動計画)のハードウェア観点からの検証を行うため,現在,学内のロボット工学分野の研究者の協力を得て,本研究成果のハードウェア実装に向けて議論を進めている。そのため,本研究課題は全体としては概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の提案手法(モデル化および評価指標)の有効性を検証するため,学内のロボット工学分野の研究者の協力を仰ぎ,不確実環境下における実シミュレーション環境として,警備車両に見立てた小型移動ロボットを配置し,歩行者(被験者)を検問する環境の準備を進めている。特に現在,本研究の評価指標に基づいた移動経路をロボットに指示するためのソフトウェアについて,アルゴリズムの開発も含め共同で行い,本研究課題の速やかな遂行を目指している。また,このような応用数理およびロボット工学の両分野の共同での取り組みを通じて,今後,新たな研究課題の創出が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に続き,新型コロナウィルスの感染拡大により,当初計画していた国内外の研究集会への参加キャンセルが続き,予算の次年度使用につながった。本年度は,現時点では感染状況改善の兆しが見えているため,国内研究集会へ積極的に参加し,主に国内の研究者との意見交換を行う。さらに,国外会議へオンラインを活用した研究発表を積極的に行い,予算の速やかな執行に努める。
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