研究課題/領域番号 |
18K11191
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
足立 浩平 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60299055)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 多変量解析 / 因子分析 / データ近似定式化 / 行列代数 / 行列分解 / 主成分分析 |
研究実績の概要 |
個体×変数のデータ行列をモデル部が近似する「データ近似」としての因子分析(FA)の解法が,近年になって提案されたが,その解の行列(線形)代数的性質を考究して,新たな諸定理を導出することを目的とする.これを目的とする理由は,現在普及するFAの目的関数が,個体パラメータの因子得点を消去した「変数×変数の共分散近似」に基づき,最適な因子得点の解に立脚した議論ができない事が,「FAの正体」を隠してきた経緯にある.この「FAの正体」を解明することが本研究の目的であり,FAと主成分分析の比較も行う.以上の目的に向けて,2018年度の研究成果は,次の[1], [2]のように要約される. [1] データ近似としてFAのモデルは,「データ = 共通因子得点 x 因子負荷量 + 独自因子得点 x 独自標準偏差 + 誤差」 のように表されるが,「モデル部 = 共通因子得点 x 因子負荷量 + 独自因子得点 x 独自標準偏差」が各個体の各変数について同定できる,つまり,算出可能であることを証明し,定理として提示した.この事実は,データからモデル部を減じて得られる誤差の値,つまり,残差が,個体×変数ごとに具体的数値として求められることを示し,各観測値について,FAモデルからの逸脱を評価できることを意味する.この効用を実データを用いて例証した. [2] 共通因子得点と独自因子得点の最適解は,一意には定まらないが,最適解が満たすべき数式を明示的に示した.この数式は,幾何学的には,共通因子得点と独自因子得点を要素とするベクトルが,データ行列の線形結合をベクトル化したものを中心とした円錐を構成することを示す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記した[1]データ近似としてFAのモデル「データ = 共通因子得点 x 因子負荷量 + 独自因子得点 x 独自標準偏差 + 誤差」のモデル部の同定可能性の証明, [2] 不定な共通因子得点と独自因子得点の最適解の明示的数式表現の達成は,当初から予定された実績であるため.
|
今後の研究の推進方策 |
因子分析のデータ近似定式化に基づいて,因子分析の解と,主成分分析の解の相違を対比する不等式を導く. 次に,データ近似定式化に基づく因子分析の解では,各変数の独自因子と他の変数がわずかに相関することが見いだせ,これは因子分析の理想から逸脱することを示すが,因子分析はこれを最小化しようとする点で,Rationalityを持つことを論考し,上記の逸脱の除外を制約条件として導入する強制約因子分析との数理的関係を考究する.
|